「暗闇で炎を眺めていると癒される」

永松氏は、さらにこう続ける。

「焚火を囲んで話すと心理的な距離も縮まります。当社が行うイベント参加者も、見知らぬ同士でもやがて親しくなり、SNSの連絡先を交換したりしています。『暗闇で燃える炎を眺めていると癒される』という声も聞き、燃える火には揺らぎ効果もあります」(同)

焚火ラウンジの横にある直営店には「まき」も積まれており、足りなくなれば追加の薪(1束880円)も購入できる。ひとくちに薪というが種類もさまざまだ。

「スノーピーク-昭島アウトドアヴィレッジ」の店内の様子。焚火用の薪も置かれている
筆者撮影
「スノーピーク 昭島アウトドアヴィレッジ」の店内の様子。焚火用の薪も置かれている

「薪となる木材には、大きく分けて針葉樹と広葉樹があり、着火性が良いのは針葉樹のスギやマツです。広葉樹は火が付きにくいものの、火持ちします。広葉樹の中では白樺は燃えやすく焚き付けの薪に向いています。火の勢いを調整する薪の組み方もさまざまです」(同)

熟練者は多彩なやり方を行う。あえて燃えにくい薪で苦労を楽しむ人もいれば、気温や天候で薪を細かく変える人もいる。芸能人や業界の有名人が「鍋奉行」ならぬ「薪奉行」として独自のやり方を動画で発信するケースも話題を呼び、夏でも焚火を楽しむ愛好家は増えてきた。逆に、寒い冬は暖を取るのに最適で、虫に悩まされないので人気だという。

「薪が燃え尽きてきました。この段階を『置火』といい、チカチカと光り幻想的です」

こうした話も焚火を囲みながら聞いた。パチパチと燃える炎を見ながらの会話は通常の取材よりも風情があり、置火は味わい深い。薪の燃えるニオイも久しぶりに嗅いだ。

「障壁」を取り除くための“手ぶら”プラン

今回、焚火ラウンジでは焚火以外も楽しめるプランを用意した。例えば「手ぶらBBQプラン」(価格1万1000円=1組4人まで。追加大人1人1650円、高校生以下同880円、小学生以下無料)は、焚火とバーベキューがセットになったプランで、食材を持ち込めば、さまざまな料理を楽しむことができる。軽食メニューやドリンク(別料金)は店頭で注文可能。参加人数で割れば、手頃な価格で楽しめそうだ。

マーケティングや商品開発の現場では、「消費者の障壁を取り除く」という共通認識がある。この場合の「障壁」は物理的や心理的な抵抗感をさす。

例えば最近よく聞くのが、ペットボトル飲料の空きボトルを捨てる際、「ラベルを剥がすのが意外にストレス」という声だ。

コロナ以前、通勤をしている時代は気にならなかったが、リモートワークが中心となりペットボトル飲料の自宅消費も増えた。容器によって剥がし方が違い、うまく剥がれない時もある。これに目をつけたメーカーはラベルレスの容器を発売して消費者に支持された。