皆がお遊戯をしているのをのぞき見る不気味な幼稚園児だった

これから増えていく「義務」からどう逃げるかで頭がいっぱいになり、自分の意思に反する「やらなくてはいけないこと」にこのときから抵抗していくことになりました。

ふみくんの手料理
今は沖縄在住のふみくん。郷土料理のゴーヤチャンプルーもよく作る。(写真=筆者提供)

幼稚園はバスが迎えにくるため登園から逃れることはできませんでしたが、お遊戯に参加した記憶はありません。

「一挙手一投足、指示通りに動かなくてはいけない」こと、それを「疑問なく受け入れる」周りに異様な不気味さをおぼえ、裏山に逃げかくれお遊戯がすすめられていく教室をのぞき見る不気味な園児でしたが、小中高と学校生活自体にはなにも不満を感じていませんでした。

たくさんの習いごとをさせられていた僕は、習いごとの数だけ「つづける/逃げる」の判断を行う訓練もくりかえしていました。

毎週長時間の活動をするボーイスカウトに入団させられそうになれば、「この服を着たくない」とはねかえし、英語教室に通わされれば「あそこにはお化けが出るから行きたくない」など、嫌な習いごとにはありとあらゆる方向から抵抗の姿勢を見せてきました。

しかし、好きな習いごとはつづけられた

なかでも逃げに逃げたのは剣道です。毎週日曜早朝6時に道場に行き、2時間の座禅をしたあとは道場の掃除を1時間、昼まで稽古……。

ふみくんの手料理
高校生のころからずっとやってきた食事作り。たいていの料理は作ることができるという。(写真=筆者提供)

子どもの精神を鍛えることに重きをおいた剣道場は真心から子どもの成長を願う先生たちが運営していましたが、こんなきついこと、僕に耐えられるはずがありません。

取りたてていいわけをするでもなく、「きつい! 無理! やめる!」と伝えたところ、母からは「やめたいなら自分の口でやめることを伝えなさい、それが武士道」との答え。

まったく話が通じていません。僕はあの道場になんとしてでも近づきたくないのです。

苦肉の策で僕はやめる旨を手紙に書き、道場の戸口にはさむことにしました。

生半可な言葉では「たるんでる!」と連れもどされてしまうかもしれないため、「まったくやる気がありません! つづける気力がまるでなくてごめんなさい!」と強気の逃げメッセージを記したことをおぼえています。

「どうか僕を見捨ててほしい!」という願いは先生の心をくじき、電話がかかってくることもなく無事見放されることに成功しました。

「そんな逃げてばっかじゃロクな大人になれない、あなたより小さくてもがんばっている子もいるのに……」なんて母親に嫌味もいわれましたし(事実ロクな大人に育っていませんが)、水泳やお絵かき教室など好きな習いごとはいっさいやめようとは思いませんでした。

僕にとってみれば、嫌なことをつづけるよりも、好きな習いごとをすることや友達と遊ぶことの方がよっぽど重要だったのです。