「申し込みを録音している。裁判を起こす」

同年(2013年)に、次のような相談がありました。

80代女性のもとに「注文を受けた健康食品を送る」と電話がありました。女性が「注文していない」と言うけれど、業者は一方的に「キャンセルできない。申し込みを録音している。裁判を起こす」と言われ、仕方なく受け取りを承諾してしまいます。

家に届いた箱の中には、商品の代金(約4万円)が記入された現金書留の封筒が一緒に入っており、業者からはお金の催促電話だけでなく、連絡をするようにという電報までも届いたといいます。

このように一端、商品を送ることに同意させてから、執拗にお金を要求する手口も出てくることでしょう。

知っておいてほしいのは、電話をかける際の悪質業者の手口です。

業者は実際に家人が過去に商品を購入したリストを見て電話をかけます。その時、さもその時に購入した業者を装い、「あなたからの申し込みがあった」と嘘をつきます。そして、しつこく「商品を送ります」を繰り返し、根負けした相手から「はい」という、同意の言葉を取ろうとします。当然、値段は告げません。安い商品のようなニュアンスで話をしてくるかもしれません。

携帯電話で会話するシニア男性
写真=iStock.com/sakai000
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そして送った後に電話をかけて、「あなたは、商品の注文に『はい』と、同意の返事をしたではないか」と話をすり替えて、高額な代金の支払いを迫ってくる恐れがあります。

だまされないためには、会話のなかで安易に「はい」や「わかりました」を口にしないことが大事になります。

特に、注意してほしいのは、私たちが受け取りやすい状況に付け込まれることです。

昨年、業者が「新型コロナ影響をうけて、観光をする人が減り、経営が苦しくなった。助けてほしい」と窮状を訴えて、魚介類などを送りつけて、購入させようとしてきました。その前にも、令和への改元に乗じて「平成最後の記念に、どうですか?」と電話をかけて、高齢者に皇室関連の写真集などを送り付ける手口もありました。天皇陛下の関連商品ゆえに捨てがたい気持ちになる高齢者は多くなり、お金を払ってしまう心境にさせられます。