降って湧いたケニア行きに「ラッキー!」

その会社では採用業務を担当。起業したい若者が多く集まる体育会系のノリの会社で、現在の夫と出会う。「いつかアジアで起業したい」と明言していた夫は、河野さんと付き合いはじめてすぐにインド、フィリピン、ベトナムと、アジアを拠点に仕事を開始。その後、夫から、アフリカ・ケニアに移住して現地で起業したいと聞かされた。

ケニア・ナイロビのマサイマーケットで
ケニア・ナイロビのマサイマーケットで 写真=河野リエさん提供

「正直、『ラッキー!』と思いました。私の周りには起業をしたいという人も、海外で暮らしたいという人もいなかったので、先が見えないのが面白いなと思ったんです。アフリカに行く人というのは、確固とした目的や覚悟を持った立派な方が大半だろうけど、私は『旦那さんについていくだけで未知の体験ができる!』と」

とはいえ、ケニアについて知っている知識といえば、テレビで見る先住民のマサイ族ぐらいのものだった河野さん。そこからケニアについて調べ始めるが、出てくる情報の多くは「治安が悪い」「貧しい」などのネガティブなものばかり。ワクワクした気持ちは萎え、不安を抱えながらのケニア行きとなった。

ケニアの首都、ナイロビの市内
ケニアの首都、ナイロビ市内 写真=河野リエさん提供

2018年2月、ついにケニアの首都ナイロビに降り立った河野さんは、高層ビルが立ち並ぶアフリカ有数の大都市の姿にカルチャーショックを受ける。

「キレイに舗装された道路とビルがあって、おしゃれなカフェやカラフルでかわいい雑貨もたくさんあるんです。交通量が多く、信号がない場所も多いので自分で運転するのはためらわれますが、移動の多くはUber(ウーバー)で事足ります。一番驚いたのは、携帯ひとつで送金できる『M-PESA(エムペサ)』という電子マネーが普及していて、現金をほとんど持たなくて済むこと。普及率はおよそ9割で、日本より進んでいます」

河野さんが何より感心したのは、「人」だ。

ナイロビのおしゃれなカフェ・レストラン。アフリカ布をインテリアに使っている
ナイロビのおしゃれなカフェ・レストラン。アフリカ布をインテリアに使っている 写真=河野リエさん提供

「みんな優しくて、陽気で、こっちまでハッピーになるんです。『私が知りたかったのはこういう情報なのに、なぜみんなこういう部分を発信しないんだろう?』と思ったぐらいです」

通信状況もよく、カフェにはWi-Fiが完備。貧富の差が激しいケニアでは、水道、電気、ガスといったライフラインの整備は住むエリアによって違うが、「ありがたいことに今のところ生活に支障はまったくありません。たまに停電はありますが、すぐに復旧しますし」と河野さん。クルマで1、2時間も走れば広大な国立公園がいくつもあり、ライオンやアフリカゾウといった大型野生動物が悠然と草原を行く姿がみられる。夢のような環境といっていいだろう。