若い男性を取り込めた
見た目の透明感や、どこか懐かしさを感じさせる「ラムネ味」は当初から決めていたそうですが、程よい後味の「ミント」の清涼感を感じさせるのが難しかったとのこと。
発売した20年3月は、くしくもコロナ禍となり、駅の乗降客数が急減する時期とも重なりましたが、それでも「天然水で作られたゼリー」という斬新さが、先の通りSNSなどで大いに話題に。
狙い通り、夕方の時間帯、若年男性を見事にとらえたほか、高いリピート率も確保したといいます。他方、10、20代の女性ユーザーは購入者の1割弱にとどまり、「女性が軽く振っただけでは、ペットボトルからゼリーが出てきにくいのかもしれない」と飯田さん。
顧客の購買行動をどこまで把握しているのか
ところで、天然水ゼリーの発売元・JR東日本クロスステーションは、なぜ顧客の詳細な購買行動を分析できたのでしょうか。
同社の自販機におけるデータ取得方法は、おもに2つです。1つは、「スイカ(JR東日本のICカード)」を使って購入した顧客に関する情報。厳密には、スイカに登録された個人情報は、JR東日本本体が保有・管理するもので、「たとえ定期券用に入力された情報でも、一グループ企業の弊社では把握できない」(同広報担当)とのこと。
一方で、自販機やスイカのICカードには、一つひとつ番号が振られていて、後者は通常、残金を「チャージ」する形で同じ番号を使い続けます。Aさんのカード番号が、仮に「0321」だったとすると、同じ0321のカードで「朝×時には八王子の自販機αで、昼△時には新宿の自販機βで、それぞれ○○という同じ商品を買った」ことまでは分かるそう。
つまり、Aさんが何時に、どの駅の自販機で、○○という商品を何度買ったかは、容易に把握できるのです。
アキュアの会員は20万人
もう1つのデータ収集方法が、同社が運営する「アキュア メンバーズ」の会員情報。6月末現在、会員数は約20万人いて、ここから居住地の郵便番号や性別、年代といった属性まである程度、分かるといいます。
「21年4月、弊社は同じくJR東日本グループでコンビニ、カフェ、商業施設を担っていた3社と経営統合し、社名も変わりました。今後は各事業部(カンパニー制)のデータを基にした『シナジー(相乗効果)』も期待できると思います」(同広報担当)。