「激しい性格がアダになっている」は本当か

2016年の全米オープンでローアマに輝いたラームは、その翌週にプロ転向し、米ツアー参戦を開始した。やがて、ティムは大学ゴルフ部コーチを辞してラームのマネジャーになり、比類まれなる才能を傍らで支えるようになった。

そしてラームは、デビューから間もなかった2017年1月、今回の全米オープンと同じトーリーパインズで開催されたファーマーズ・インシュアランス・オープンで初優勝を挙げると、次々に勝利を重ね、昨年までで通算5勝を挙げていた。

だが、なかなかメジャーでは勝てず、その原因は「感情のコントロールができないからだ」と米メディアから何度も指摘されていた。ミスするたびに怒声を上げ、クラブを叩きつけ、ルール委員に詰め寄ったこともあった。

「激しい性格がアダになっている」――しかし、愛妻ケリーは「コースから一歩離れれば、彼はとてもシャイで、休みの日に出かける先といえば、近所のレストラン1軒だけ。顔なじみで自分が座る場所が決まっているその店なら安心できる。彼はそういう性格です。コースで激しい態度が出るのは、きっと勝ちたい気持ちの裏返し。フツウはそれを上手に隠すけど、不器用な彼は隠せず表に出してしまう」

「新型コロナ陽性」を告げられても、不思議と落ち着いていた

今年4月のマスターズ直前、ラーム夫妻には第1子となる長男ケパくんが誕生した。

「ジョンは良き父親になると誓い、試合中も大人の態度を取ろうと頑張っていました」とケリーは明かした。

キャディのヘイズも「そう、ジョンは頑張っていた。いや、頑張り過ぎて逆にぶちっと切れてしまった。マスターズでは最初にボギーを叩くまでしか持たなかった。全米プロでは3日目までしか持たなかった」。

そんなラームに変化が見られたのは、全米オープンの2週間前に開催された米ツアー大会、メモリアル・トーナメントの3日目終了後だった。

2位に6打差の単独首位で54ホールを終えたラームは、その日の朝に受けたPCR検査の結果、新型コロナ陽性だと係員から告げられ、大会連覇がかかっていたというのに、即座の棄権と10日間の隔離生活を余儀なくされた。

まさに青天の霹靂。「でも不思議なことに、あのときジョンは怒ることなく、慌てることなく、その状況を素直に受け入れた」と愛妻ケリーは振り返った。