塾も受験者・保護者も「性差」問題は“暗黙の了解”
冒頭で取り上げた東京都立高校の入試における「性差」問題は、公的な教育機関ゆえ問題視されている面が強い。では、私立の中学高校にこのような問題が生じているのはどうなのだろうか。私学ゆえ学校ごとの裁量に委ねて全くさしつかえがないと見なしてよいのだろうか。
だが、「東京都私立学校教育助成条例」に目を通せば、地方自治体(この場合、東京都)が私学教育に対してさまざまな助成をしていることがわかる。すなわち、私立中学高校を純粋な私的教育機関とは言えない側面もあり、この中学入試における「性差」問題が公立校と同様にクローズアップされる可能性もあるだろう。
それでは、現在の中学入試の「性差」問題、不平等を解消するための何かよい「落としどころ」は存在しないだろうか。以下のような仮の事例を通じてシンプルに考えてみたい。
都内在住で同じ共学私立中学校を志す小6の男女の双生児。入試結果は、男の子は合格したが、女の子が不合格だった。受験生本人が入試得点結果の開示請求をすると(一部の学校が請求に応じている)、男の子よりも女の子のほうの総合得点が高かった。この時、保護者や女の子が納得できるだろうかといえば、それは難しいだろう。
先述したが、共学入試で男女差が生じるのは学校サイドの諸々の事情も関係している。その点は、わたしを含む塾関係者だけでなく、多くの受験者や保護者であっても「まあ、そういうものだ」と割り切っているのが現実だ。
男女共学校の中学受験「性差」問題への2つの提案
それでも、わたしは共学私立中学入試で次の2点を提唱したい。これで性差による不平等感が完全に解消されるわけではないが、1校でも以下の提案に耳を傾けてくれる学校があるとしたら、多少なりとも救われる受験生が出てくるのではないか。
① 私立中学校は事前に受験生、受験生保護者に向けて男女それぞれの定員をはっきりと明示する。目現時点では、募集要項で男女計●●人と発表をする学校が多いが、学校側の希望する男女比率を事前情報として明確に反映させることで、志望校選定の大切な参考材料となるだろう。たとえば、女子の入口が狭いことをあらかじめ知ることができれば、その学校の受験をあえて避けることだってできるはずだ。
② 上記①の男子別定員を明確にした上で、男女別に入試問題を作成する。これは、どちらかを易しくして、どちらかを難しくするということではない。同じ尺度を適用した結果、男女の合格最低ラインが乖離するくらいなら、最初から「男女別の尺度」を用意したほうがよいのではないか。もちろん、この場合であっても、男女それぞれの実質倍率、合格者最低点を公表すべきである。
読者にとってわたしの申し上げることは暴論に感じられるだろうか。
今回の東京都立高校の男女別定員制の問題が私立中学高校にも波及し、教育関係者たちの中学入試における性差問題への議論が活発になることを期待している。