工藤校長が親に授ける子供の自主性を育てるコツ1
Q:「ルールを守る子にするには、どうしたらいい?」
ルールを守らせたいならば、それを決めるところから子供に任せてみましょう。自分が作ったルールであれば、守ろうとするモチベーションが生まれます。
麹町中は宿題も定期テストもなく、教員も「勉強しろ」とは言いません。入学してきた当初、子供たちは大喜びで自由を満喫します。
しかし、そのうち何も言われなくても自分から勉強するようになっていきます。どうしたらいいのかと常に問い続け、自分で考え、判断し、行動するようになる。その中で、「自由というのは楽しいことだけじゃない。自分のことに自分で責任を持つということなんだ」ということを徐々に理解できるようになっていくのです。
成長したくない子供なんて一人もいません。最初は麹町中の教員も保護者の方も、「宿題も定期テストも廃止して子供に任せる」という方針を聞いて、不安だったようです。それでも最終的には子供自身が自分で決めることのメリットを見いだしていったのです。
「給食当番はボランティア」生徒発案が大成功したワケ
ルール作りといえば、麹町中でのおもしろい事例があります。あるとき、給食委員会の生徒が「給食当番はボランティアでいいんじゃない?」と言い出したんです。それまではクラス全員が順番に担当していたのですが、やる気のない当番の場合、給食の準備が遅くなり、昼休みが短くなってしまうことがありました。それならば“昼休みを確保するために自分がやりたい”という人を募ってみようということになったのです。
結果はというと、希望者は集まり、当番業務も円滑に回り、全員にとって良い結果になりました。
自分たちで考えた方法がうまくいったときの充実感は、何物にも代えられません。こうした経験を経ることで、子供は自分の周りにある課題を見つけ、自分で解決策を見いだせるようになっていきます。
子供に決めさせず、大人が与え続けていくと、子供は自分がうまくいかないことさえ他人のせいにするようになってしまいます。
たとえば、朝、毎日起こしていたら、寝坊して遅刻した際に文句を言われた経験はありませんか? 寝坊した自分が悪いのではなく、親が7時に起こさなかったからだと不満を言うようになるのです。
子供にルール作りを任せるといっても、最初は親のサポートが必要なケースも多いと思います。忘れ物が多かったり、朝起きられなかったりなど、子供がうまくいっていないタイミングで「どうしたの?」と質問し、対話しながらルール作りのサポートをしてやってください。
子供が具体的な内容を考えつかないときは、親が一緒に考えながら具体例を示し、そこから選択させてもよいと思います。
さらに、子供の考えたルールが期待外れなものでも「勝手にしなさい」とは言わないことです。「任せる」と「見放す」はまったく別の行為です。それに、もしそのルールで子供が失敗したら、そのときこそチャンスです。
なぜ失敗したのか、次はどう工夫すればいいのかを話し合うことは子供にとって大きな学びの機会になるでしょう。
子供に失敗をさせたくないと思う気持ちはわかります。しかし、試行錯誤をしながら前に進んでいく喜びは誰のものでもなく、子供自身のものなのだと理解しておきましょう。