東京大学の「学生生活実態調査」によれば、東大生の親の6割が年収「950万円以上」だ。一方、都内在住の東京大学文学部4年・布施川天馬さんの家庭の場合、世帯年収は平均300万円。自営業をする両親の実家はかつて夜逃げしたことがある。経済力が高くない家庭の子供が東大に「逆転合格」できた理由とは――(前編/全2回)。

※本稿は、ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

東大安田講堂
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受験の年に度重なる試練「母はがん、父の仕事は軌道に乗らず…」

「勉強が間に合わない。さすがにやばいかもしれない」

2016年秋、当時高校3年生の布施川天馬さんの東大受験まであと3カ月足らずの頃。受験勉強は当初の予定より確実に遅れて、彼は焦っていた。

「東大対策講座のような予備校の授業を受けたいと思いましたが、そんな金銭的な余裕がないことはわかっていました。独学でどうにかするしかなかった」

そんなとき追い打ちをかけるような出来事が起きた。母親の美由起さんが乳がんにかかっていることがわかったのだ。11月のがん発覚から、入院・手術、リンパへの転移発覚、再入院・再手術、抗がん剤治療……とちょうど大学受験シーズンに重なる時期に母は病と闘うことになった。

最愛の母に、もしものことがあったら……。不安と焦り。それまでの生活から一転、心が張り裂けそうなつらい日々が始まった。

「しかも父はちょうどこの頃、自分の会社を立ち上げたばかりでうまくいかず、派遣で日雇いの仕事を入れたりしていたんです」

天馬さんはこれまで経験したことのない慌ただしさを抱えていた。