カヨコさん(37歳・仮名)の場合
「人としての夫をとるか、父親としての夫をとるか、さんざん悩みました。子どもたちが大きくなったとき、夫を人として見たら許した私が非難されるかもしれない。それでも私は、父親としての夫を優先させました」
苦渋の選択をしたと語るのは、カヨコさん(37歳=仮名・以下同)だ。3歳年上の男性と3年つきあい、29歳のときに結婚した。翌年、妊娠し、臨月に入ってからは、徒歩10分ほどの実家で生活することが多くなった。
「夫は多忙でしたし、出張も多かったので不安だったんです。両親がいる実家なら、何かあってもすぐ病院へ運んでもらえる。夫も『そのほうがオレも安心』と言ってくれていました」
予定日を待たずに陣痛がきて夕方、母親とともに病院へ。その日、夫は1泊で九州に出張中。病院へ行くとき、陣痛の合間、そして出産してすぐと、何度も連絡をとろうとしたのが、夫にはメッセージも電話もつながらなかった。
ヘアブラシを取りに家に行くと、出張中のはずの夫が…
「夫がようやく連絡をくれたのは、明け方に出産した日の昼ごろ。電話ではなくてメッセージでした。『仕事で連れ回されて連絡できなかった。ごめん。今から飛行機乗ってすぐ帰る』と。電話してみたのですが出ませんでした。本当に九州にいるのかしらと不安になったのを覚えています」
その不安は的中。夫は自宅にいたのだ。お気に入りのヘアブラシを自宅に置いてきてしまったことに気づいたカヨコさんは、母親に取ってきてほしいと頼んだ。
「母は、ヘアブラシなんて売店で買ってくるわよと言ったのですが、私、なんだか嫌な予感があったんでしょうね、どうしても自宅から取ってきてほしいと頼んだんです。母も、私の尋常ではない雰囲気を感じ取ったのか、鍵を預かって行ってくれました。鍵を開けてリビングに入ったら、Tシャツにパンツ一丁でソファに寝っ転がっている夫がいたそうです。テーブルの上にはワイングラスがふたつ、しかも部屋は乱れていて夫は焦りまくっている。バスルームに女性がいたんですね。どういうこと、と母が呆然としていたら、『あとで説明しますから、取りあえずここはお引き取りを』と夫が土下座したんだそうです(笑)」