精神科病院には症状の重い患者などを収容する「閉鎖病棟」がある。閉鎖病棟に入院した経験のある牧師の沼田和也さんは「私が入院した閉鎖病棟には、金づちで妹の頭を殴打した少年や、幻覚に苦しむ少年など、さまざまな症状を抱える少年たちがいた。交流をするなかで、彼らはある共通点を持つことに気づいた」という――。

※本稿は、沼田和也『牧師、閉鎖病棟に入る。』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

外の景色を眺めるティーンエイジャー
写真=iStock.com/Alex Potemkin
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「まさかそんな人と同じ部屋になるなんて」

同室の16歳の少年、マレと仲良くなると、彼の友人たちとも親しくなった。隣室の17歳の少年、キヨシ。廊下を挟んだ部屋にいる21歳の青年、カケル。19歳の大人しい少年、リョウ。彼らはいつも、わたしがいる部屋に集まってくる。

閉鎖病棟は、することが少ない。週なんどかの作業療法や、看護師に引率されての買い物があるとはいえ、基本的には暇である。彼らはとくに夕食後から就寝時間まで、修学旅行で旅館に泊まった子どもたちのようにじゃれあい、ときには喧嘩もした。マレが自分語りを始めた。

「ぼくはこの春、○○校の中等部を卒業しました。で、この春から高等部に入ったんですよ」

わたしはハッとした。幼稚園とも交流のある特別支援学校である。

「その学校、ぼくも入学式や卒業式に、来賓で呼ばれて参列しているよ。ぼくは教会の牧師で、幼稚園の理事長兼園長だったんだよ」
「じゃあ、ぼくが卒業証書を受け取るのを見てたんですね!」

マレの眼が輝く。

「そうそう! へえ、ぼくたちは出会ってたんだね」
「そういえば、あなたをエレベーターで見たような気が。パリッとしたスーツ姿だったから目立ったんです」
「うん、先に妻が入院していたからね。その見舞いに来ていたんだ。今度は入れ替わりで、ぼくというわけ」
「まさかそんな人と同じ部屋になるなんてなあ!」