早くワクチンを打ちたい一方で…

さて、私が住んでいる東京・中野区でも、ワクチン接種が始まった。かつては革新区政だったこともあり、そのかすかな名残だろうか、昨年の一律10万円の特別定額給付金配布も「アベノマスク」も比較的早く届いた。今回のワクチン接種も他の区より少し早いようである。

しかし、古い町だけに高齢化の進み具合も早く、5人に1人が高齢者である。総人口は約34万人だから、7万2000人ほどいる。後期高齢者のワクチン接種の申し込みは5月10日から始まり、すぐにいっぱいになった。

バス停で会う90近い元気な老婦人は、かかりつけ医に15分間、何度も電話してようやく予約が取れたと憤慨していたが、保健所などに応募者が殺到して、区の係員が慌てて中止したという騒ぎは、この区では聞かないようだ。

といっても、スムーズに予約が取れるわけではない。私はネットで申し込んだが、根がのろまということもあるのだろう、クーポン券番号を入力している時に締め切られてしまった。

次回は21日からだから、首尾よく予約できたとしても接種を受けられるのは6月になるだろう。

予防接種を受ける高齢者
写真=iStock.com/Inside Creative House
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接種を急いでいないわけではないが、私は75歳で、長年、高血圧と糖尿病があり、薬を欠かせない。接種後に亡くなった人が39人もいると聞くと、もう少し遅くして、どれくらい副反応が出るのか、様子を見たほうがいいかもしれないとも思っている。

厚生労働省によれば、有識者検討会は、このうちの9人を「評価できない」、11人を「評価中」としていると発表しているが、個々の死亡理由は分からない。

接種した翌日、突然意識を失った

週刊現代(5/22・29日号)は、亡くなった人たちのケースを取材している。

北海道旭川市に住む木下隆弘(仮名・享年46)は、3月19日にワクチン接種を受け、その翌日に亡くなってしまった。彼は旭川市にある旭川赤十字病院で事務職員として働いていたため、医療従事者として接種を受けた。

当日に腕の痛みを感じたという。翌日、朝から「背中が痛い」と妻に訴えたため、近所の整形外科に行ったが、別の病院で診てもらうようにいわれた。

だが帰宅後、木下は突然意識を失い、いびきをかき始めた。救急車で勤務先の旭川赤十字病院に運ばれたが、搬送された時点で心肺停止状態だった。

死因は、身体の中で一番太い血管である大動脈が裂ける急性の大動脈解離で、70代以上に発症することが多いが、40代、しかも身長が180cmもあるがっしりした体格で、特に持病はなかった彼がなぜ?

福岡県で3月23日に亡くなったのは太田彩(仮名・享年26)。県内の公立病院で看護師として働いていた。元々小児科病棟で働いていたが、病院がコロナ患者を受け入れることになり、彼女もその担当になった。