怒り出す人、マスクで口の動きが読めない…
聴覚に障害がある人にとって、接客の難しさはある。nonowa国立店で働く野村恒平さんは「私が聞こえないことを知らない人もたくさんいるので、なかなかやり取りがスムーズにいかず、接客中に怒りだしてしまうお客さんもいた」と振り返る。筆談ボードを差し出しても書かない人もいる。
コロナ禍でマスク着用になり、来店客の口の動きを読むことができないもどかしさもある。
野村さんはこうした状況に難しさは感じているが、悲観はしていない。同僚たちから助言を受けながら、できるだけ分かりやすいジェスチャーを取り入れた。テイクアウトかイートインか、テイクアウトなら紙袋は必要か、不要か、こういったことを身振り手振りで聞いている。
英語や日本語と同じ、一つの言語だから
野村さんは福岡から上京することを考えていた時、たまたま見たスタバのサイトで、nonowa国立店の求人を見つけて応募した。
この店で働くことで地域やお客さんにどんなことを伝えたいですか、と聞いた。「手話は、英語や日本語などと並ぶ一つの言語だということを知って、関心を持ってほしい」と野村さんは答えた。聞けば「ヤバい」などの若者言葉や流行語を表現する手話もあって、高齢のろう者は分からない場合もあるという。
書店の中には、手話の本が福祉コーナーに置かれ、人の目に触れにくいケースもある。英語や中国語と同じように語学コーナーで扱えばもっと多くの人に目にとまるはず。野村さんはそう考えている。
障害者雇用の現状はまだまだ厳しい
日本の企業全体に目を転じると、障害者の雇用は厳しい。国は3月、働き手の一定割合以上、障害者を雇うことを義務づける法定雇用率を引き上げた。民間企業は0.1ポイント上がり、2.3%になった。障害者を1人雇う義務が生じる企業は、従業員45.5人以上から43.5人以上に対象が広がった。
厚生労働省によると、2020年6月1日時点で、企業での雇用者数は57万8292人となり17年連続で増えている。ただ、法定雇用率を達成している企業は48.6%にとどまる。
ちなみにスターバックス コーヒー ジャパンの障害者雇用率は3.15%だ。「ダイバーシティの最前線」であるnonowa国立店を参考にしたいと、企業や自治体からの視察も増えた。