20歳の女子アスリートに「苦しい」と言わせる人の無神経さ
東京五輪の開幕まで約70日。競泳の池江璃花子(ルネサンス)の“告白”が世間をザワつかせている。「日本代表辞退」や「東京五輪への反対」を要請するメッセージが自分に寄せられたことをツイッターで明かしたからだ。
池江はツイッターで次のように綴っている。
〈いつも応援ありがとうございます。Instagramのダイレクトメッセージ、Twitterのリプライに「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」などのコメントが寄せられている事を知りました。もちろん、私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、期待に応えたい一心で日々の練習をしています。オリンピックについて、良いメッセージもあれば、正直、今日は非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。長くなってしまいましたが、わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても温かく見守っていてほしいなと思います〉(原文ママ)
池江は白血病による長期療養を経て東京五輪代表内定を決めた。控えめに言って「奇跡の復活」を果たした人に対して、直接“刃のようなメッセージ”を送りつけ、「とても苦しい」と言わせてしまう……本当に残念としか表現のしようがない。
コロナ禍で、誰もが感染の恐怖を感じ、自粛生活を強いられ、病床も依然不足していて、ワクチン接種はいつになるかわからない。勤務する会社の業績も低迷の一途で、給料は減るばかり。そんな強い不安と不満がひとりのアスリートに向かったということだろうか。
アスリートに取材すると、SNSに送られるダイレクトメッセージやリプライは応援メッセージが大半だという。だが時折、今回のように目にしたくないコメントを寄せられることもある。誹謗中傷のメッセージを送りつけるアカウントは個人を特定できないようなものが多い。プロフィールがほとんど書かれておらず、フォロワー数も非常に少ない。いつでも“逃亡”できるようにサブアカウントを使っている場合もある。
要はメッセージに覚悟も信念もないのだ。そんな無責任な言葉を池江は真に受けなくてもよかったが、根がマジメで純粋な選手ほど「期待に応えたい」と正面から受け取ってしまう。