少なくとも2027年までは中国軍の優勢が続く見通し
中国は1996年、台湾独立派とされる李登輝総統が当選した選挙に合わせて、台湾近海に向けてミサイルを発射し、李氏の当選阻止を試みた。しかし、米国が2隻の空母を台湾近海に差し向けると軍事力に劣る中国は、たちまちのうちに威嚇をやめた。
この台湾危機を受けて、中国は米国に対抗する「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)を掲げて軍事力の強化を図り、軍の近代化の達成目標を2027年とした。
一方の米国は中東におけるテロとの戦いに明け暮れ、宇宙・サイバー・電磁波といった現代の戦争で中国に大きく後れを取る結果になった。また冷戦期にソ連との間で締結した中距離核戦力全廃条約(INF条約)の制約により、1発の中距離ミサイルも持っていないのに対し、中国は1250発の中距離ミサイルを保有している。
米軍は懸命に対中戦略や兵器体系の練り直しを急いでいるが、少なくとも2027年までは中国軍の優勢が続く見通しだ。
習近平国家主席は「武力の使用は放棄しない」と明言
米国のインド太平洋軍司令官が、中国による台湾侵攻を「6年以内」と明言したことには、政治的な要因もある。
中国の習近平国家主席は2019年1月2日、将来の台湾統一に向けた方針についての演説で「武力の使用は放棄しない」と明言。2020年5月22日には李克強首相が全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、台湾との再統一に触れた政治活動報告から初めて「平和的」との文言を削除した。
台湾統一に武力行使も辞さないとする習近平氏の国家主席任期は、2018年の憲法改正で2期10年の制限が撤廃され、2期目の終わる2022年以降も国家主席の続投が可能となった。その場合、3期目の終わりは2027年となる。一方で、中国共産党総書記の任期が切れるのが2027年秋。これに2027年8月の人民解放軍の創建100年が重なる。
こうした背景と中国軍が米軍に対し優位に立つ期間も2027年までであり、これが「6年以内」の根拠とみられる。