ガキ大将のような中国の振る舞いに「けんか腰」でよいのか
こうした中、英国政府は4月、新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群のインド太平洋派遣を発表した。ドイツも9月にはフリゲート艦を派遣する。フランスは2018年から空母打撃群など海軍艦艇のインド洋派遣を続けている。
日米豪印の域内国と英仏独の欧州勢が入れ乱れるインド太平洋は、第2次世界大戦の前夜、欧米が連携して日本に圧力をかけた当時の様相に酷似してきた。今回、輪の中心にいるのはもちろん中国だ。
中国は、国際法を無視して南シナ海の内海化を図り、管轄海域を特定しない海警法を制定するなどやりたい放題が目立つ。台湾に対しては防空識別圏内に軍用機をたびたび差し向けて脅している。
経済成長に伴って軍事力を強め、インド太平洋においては米軍に対抗できる攻撃力を持つに至った中国軍。とはいえ、図体ばかりでかいガキ大将のような中国の振る舞いをただすのに「けんか腰」でよいのだろうか。
インド太平洋を「戦場」にしないために軍事力一辺倒の見直しを
台湾問題は、多国間が協調する枠組みを利用して、米中の対立を軟着陸させる方法を選べないだろうか。
米国にすれば、日本や韓国といった同盟国を味方に付けなければ対中包囲網に穴が空き、米国の対中政策はおぼつかない。日韓はその利点を生かさない手はない。
一方の中国に対しては武力による台湾統一を断念させるため、国際秩序を重視するステークホルダーとしての立場を自覚させる必要がある。
たいへんな時間と労力がいるだろう。だが、インド太平洋が「戦場」になることを避けるためには軍事力一辺倒を見直し、各国が連携して米中の橋渡し役となるべきだ。そして米中は信頼醸成に努め、相互理解によって問題解決を図らなければならない。