1億6800万人を超える利用者情報の「海外流出リスク」

LINEの利用者は、国内だけで月間約8600万人、世界では台湾、タイ、インドネシアを中心に1億6800万人を超える。

2011年6月のサービス開始から、ちょうど10年。コミュニケーションだけでなく、ニュースや音楽配信、旅行や買い物、QRコード決済や保険などの事業を次々に展開。企業内での業務連絡にも使われ、最近は政府の自殺対策相談、自治体の住民票申請などの諸手続き、新型コロナウイルス感染症に関する国や自治体の通知など公共サービスにも幅広く利用されるようになった。

いまや、暮らしの隅々にまで浸透する社会インフラに進化したのである。

しかし、いま露見した利用者情報の「海外流出リスク」の危うい実態は、利用者の不信感を一気に増大させた。

「中国人スタッフが個人情報を閲覧」と朝日新聞が第一報

あらためて、「LINE疑惑」の経緯を振り返ってみる。

一報は3月17日。朝日新聞が一面トップで「LINE個人情報保護に不備 中国委託先で閲覧可に」と報じた。

報道によると、LINEの情報管理システムについて、2018年8月から2021年2月にかけて、中国にある関連会社の中国人スタッフが日本のサーバーに保管している利用者の氏名や電話番号、メールアドレスなどの情報を閲覧できる状態になっており、4人が少なくとも32回アクセスしていたという。

また、個人情報保護法は、個人情報の国外移転や海外からのアクセスには利用者の同意を得るよう定め、個人情報保護委員会は移転先の国名を明記するよう求めているが、LINEのプライバシーポリシーは「第三国に移転することがある」としただけで、「中国」とは明記していなかった。

同日、LINEは、朝日新聞の報道を追認。さらに、LINEの利用者間でやりとりしたすべての画像や動画データを韓国内のサーバーに保管していることを明らかにした。

3月23日になって、出澤剛社長が記者会見し、情報管理の不備を陳謝。中国からの利用者情報へのアクセスをすでに完全に遮断したと言明し、韓国で保管している画像などのデータは9月までに国内に移転する方針を表明した。これまでに情報漏洩は確認されていないという。また、2021年3月に経営統合したばかりの、ヤフーも傘下にもつ親会社のZホールディングス(ZHD)は、「LINE疑惑」を検証する第三者委員会を設置した。