街中の小さな店はどうすれば生き残れるのか。東京・かっぱ橋の老舗料理道具専門店「飯田屋」の6代目・飯田結太さんは「売れ筋を仕入れるのは大手企業の戦略だ。小さな店では“売れな筋”の魅力を伝えることが、生き残る道になる」という――。

※本稿は、飯田結太『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「飯田屋」6代目店主の飯田結太さん
撮影=小林久井
「飯田屋」6代目店主の飯田結太さん

売れ筋を仕入れるのは大手企業がやること

売れ筋を意識した仕入れをすれば、どこにでもある品揃えの店になります。それがかつての飯田屋でした。

売れ筋を仕入れ、在庫回転率を高めることは大切かもしれません。しかし、それは資金力のある大手企業の戦略です。同じ戦いに挑んでは、飯田屋のような小さな店はあっという間に埋もれてしまいます。わざわざ飯田屋に出向く理由がないからです。

僕たちのような小さな会社が生き残る一つの道、それは大手企業が見向きもしない“売れな筋”の魅力を伝えることです。

売れ筋にはわかりやすい魅力があります。そのわかりやすさが万人を惹きつけます。

では、売れな筋には魅力がないのでしょうか? いえ、そんなことはありません。その魅力が少し伝わりにくいだけです。

「売れな筋」を日本でいちばんわかりやすく説明する

たとえば、職人が細部まで手をかけた商品は、使ってこそ魅力がわかるものも少なくありません。置いておくだけで勝手に売れる商品ではないため、接客を通して魅力を伝えなければなりません。

それでは時間も手間もかかるため、大手企業では取り扱いたがりません。また、生産量が少ないものも大手チェーンでは展開しにくく仕入れたがりません。

そこに、中小零細企業のチャンスがあるのです。

僕たちのような小さな店の強みは、大手と比べて圧倒的に少ない固定費にあります。だから販売効率に囚われず、お客様とじっくりお話しできます。一人ひとりのお客様にかけられる時間が物理的に長くなります。

もし、僕たちが大手企業と同じような売れ筋しか仕入れなければ、小さくて狭くてアクセスが悪い飯田屋に、お客様がわざわざ来店する理由はなくなります。そこで取り組んだのが、売れな筋を日本でいちばんわかりやすく説明することでした。