土地投機疑惑と検察改革問題で文在寅政権の人気が急落
ここで思い出してほしいのは、今年1月18日にネット上で行われた文在寅氏の新年記者会見だ。文在寅氏は慰安婦問題について突然、態度を翻して「韓国政府は日韓合意を公式的なものだったと認める」と語った。徴用工問題についても「日本企業の資産が現金化されるのは韓国と日本にとって好ましくない」と語り、初めて現金化を避けたいとの考えを示した。
対中国の安全保障政策で日韓の協力関係を強く求めるアメリカに対し、従順な姿勢を見せたのである。この5月中には日米首脳会談が予定され、文在寅氏は追い込まれている。
文在寅氏の人気は急落している。たとえば4月7日の首都ソウルと第2都市釜山(プサン)の両市長選は、与党の「共に民主党」が大敗し、最大野党の「国民の力」が圧勝した。両市長選は来年3月の大統領選の前哨戦に位置付けられ、大統領選でも政権与党が負け、野党から新大統領が誕生する可能性が高い。
兵役や大学入試、就職といった若い層が強い関心を持つところで不祥事が次々と起き、人気を落とした。宅地開発を担う韓国土地住宅公社(LH)の職員による土地投機疑惑や、検事総長を辞任に追い込んだ強引な検察改革に対する反発も人気急落に拍車を掛けている。
韓国の裁判所は「反日感情」や「政権の意向」に左右される
4月の慰安婦訴訟判決について「正しい見解」「正当な判断」と評価したが、韓国の裁判所の現状は、日本のように司法が独立する三権分立ができていない。裁判所が反日感情を意識した判決や政権の意向をくむ判断をすることがある。慰安婦訴訟や徴用工訴訟はその代表例だ。
その観点からすると、1月と4月の慰安婦訴訟判決が正反対だったことがよく理解できるだろう。つまり1月18日に最初の判決が出された時点で、文在寅政権の人気自体はそれほど落ちてはいなかった。このためソウル中央地裁は政権の考え方に沿った判決を下した。
しかし、3月初旬ごろから文在寅政権の支持率が落ち込み、ソウルと釜山の両市長選で敗北した。4月21日の2度目の判決は、こうした世論の変化を感じ取った同地裁が文在寅政権に反発する判断を出したのである。