3回目の緊急事態宣言が4都府県で発出されている。このうち東京都の小池百合子知事はさまざまな独自施策を打ち出している。文筆家の古谷経衡氏は「今回の小池都知事の施策は、世間の空気を反映したもので、どれも非科学的要素が強い。非常に危険だ」という――。
緊急事態宣言が発出され、閑散とする銀座の飲食店街=2021年4月26日午後、東京都中央区
写真=時事通信フォト
緊急事態宣言が発出され、閑散とする銀座の飲食店街=2021年4月26日午後、東京都中央区

暗くすることは何のコロナ対策にもならない

軍靴の足音が聞こえる——とは決して陳腐なフレーズではない。小池百合子都知事はコロナ禍に「便乗」して、いよいよ都下を非科学な全体主義に巻き込まんとしている。これが軍靴の足音ではなくてなんだというのか。

3度目の緊急事態宣言は、前2回に比べてさらに非科学的要素が多くなった。まず「令和の灯火管制」と揶揄やゆされる東京都下における夜8時以降のネオン等の消灯要請である。コロナに視覚はない。コロナは誘蛾灯に誘引される蛾ではない。よって消灯には何の意味もない。

さすがにこの要請について、都下繁華街でもネオンが消えることはなかったことは一縷の望みではあるが、小池都知事は「ネオンの消灯により、人々が早く帰宅する効果がある」とその要請をかたくなに正当化した。常識的に考えれば、仮にその説が正しかったとしても、早く帰ろうとする人々の「密」が起こり、電車内は過密になる。誰が考えても非科学で異常な要請である。

先の戦争における灯火管制は、日中戦争時代における1937年の防空法にその根拠が書き込まれ、1938年には詳細が策定された。しかし太平洋戦争が勃発する以前のこの時代、中国(中華民国・国民党政府)は、日本本土を爆撃する能力をほとんど持たなかった。当時の日本に灯火管制の必要はなく、ただ泥沼化していく日中戦争にあって、「戦意高揚の演出」にすぎなかった。