「非正規労働者の減少」が関係しているのか

それは非正規労働者の減少である。

ここ数年は正規・非正規共に雇用数は増える傾向にあったが、20年については非正規男性が▲26万人、非正規女性が▲50万人と、大幅に減ってしまっている。

産業別で見るとやはり新型コロナで営業時間が制限されている、宿泊業、飲食サービス業が▲29万人と減らしている一方で、医療、福祉が19万人とその数を増やしている。

飲食のアルバイトなどの働く先やシフトが減り、お金が続かなくなったり、奨学金などの返済に行き詰まったことで、自殺者が増えたのだろうか?

20年における自殺の原因動機別のデータを見ると、確かに若い人の経済・生活問題での自殺者数は増えている。健康問題のほうが増加数は多いので単純に経済だけの話ではないが、少なくとも新型コロナの問題が若者や女性の自殺者数増加に影を落としているとは言えるだろう。

道端に座り込む若い女性
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コロナショックは若者たちにとって初めての壁だった

さて、実は最近の若者というのは「景気の落ち込みを経験していない」という話がある。

ずっと景気の落ち込みを実感しているわれわれからは信じがたいことだが、日本で明確に「景気が悪化した」と言えるのは、今から12年以上前、08年のリーマンショックまでさかのぼる必要がある。

実はこのときの落ち込みからこちら12年以上、少なくとも株価は低空飛行ながら右肩上がりだし、期間だけでいえばいざなぎ超えの経済成長を見せている。

もちろん諸外国が日本よりも著しい経済成長を見せているので、相対的に見れば日本経済は世界からどんどんおいて行かれているのだが、日本国内だけを見ていれば、さも景気が良くなっているように思える。

そうした「順調な若者たち」が直面した1つの大きな壁が今回の新型コロナではないだろうか。

大学に進学した学生たちは実家から離れて、学業はもちろん、サークル活動やアルバイトに精を出す未来を予想していたはずだ。

しかし授業はリモート中心で学校に行く機会は非常に少なくなり、思い描いたキャンパスライフがまったく始まらない。中には独り暮らしも始まらず、実家で授業を受けている学生もいる。

すでに人生経験を積んだわれわれから見れば、少し大学で遊べないだけのことに見えるのかもしれないが、自分の思い描いていた光景と異なる景色を受け入れることができず、日々わずかずつ苦悩を積み重ねてしまう若い人はかなり多くいるのではないか。

実は僕もそれと同じような「目の前が暗くなるような状況」を経験したことがある。それはバブル崩壊である。