「業界2位」を自慢する企業はこざかしい

【池谷】僕は、会社説明会で「当社は業界第2位です」のようなアピールをしてくるところは敬遠します。1位じゃないならわざわざ他社と比較しなくていいし、1位になれないのには何か訳があるはずなのに。そこを隠したまま2位を自慢されると、企業カラーとして何かよくないものを感じます。

【原田】自社の業績をアピールしたくても、表現の仕方によっては学生に敬遠されてしまうと。これは重要なポイントですね。

【池谷】あと「アジア向け事業は1位」っていうアピールの仕方も、こざかしい感じがします。全体では何位なのか、調べればすぐわかることなのに。「今は2位だけどもっとこうして行きたい」って言ってくれたら、本当のことを言ってくれるいい会社だなって感じると思います。

【原田】確かに、今の若者には誠実さや共感できるかどうかを重視する傾向がありますから、マイナス面を取り繕おうとするよりオープンに伝えたほうが効果的と言えそうです。この点は、年配の人にはちょっと理解しにくい感覚かもしれませんが、今後の採用活動では重視したほうがいいかもしれませんね。

年功序列は嫌だが大企業がいい

【原田】それから、田中くんは年功序列を減点ポイントに挙げていましたが、その傾向は大企業ほど強いですよね。それを避けたかったらベンチャー企業や中小企業という選択肢もあると思うんですが、田中くんは大企業を志望している。「転職に有利」という点以外にも理由はありますか?

【田中】確かにベンチャーのほうがいいかもしれませんが、実際には自分はそちらを選択していない……矛盾していますね(笑)。でも、やっぱり大手のほうが自分のやりたいことを実現しやすそうなのと、社会的インパクトが大きい仕事ができそうだから。それで大手を選んでいるんだと思います。

【原田】日本では、優秀な学生に人気の企業が30~40年程前からあまり変わっていない、という問題点があります。そうした企業はもちろんいい点もありますが、上の世代が居座っているからなかなか上に行けないし、自由に使える経費も減っていて、若者にとって得にならないこともたくさんあるように思います。昔に比べると管理職のポストが減ったり、権限が減ったりしているのに、なぜ人気が下がらないのか不思議です。

入社してしまえばしがみつけると考えている

【佐藤】結局、皆レールに乗りたいんじゃないかなと思います。大企業には、将来が保証されているっていうイメージがありますよね。今はそのレールも不確かになっているけど、大学生はそこに気づいていないのかも。周りからいろいろ言われても、結局は入社してしまえばしがみつけるものだと思っている気がします。

【原田】なるほど。そこの意識が昔と変わっていないから、人気企業も変わらないのかもしれませんね。今回は、大学生が就活の際に企業を選ぶ基準と、逆に敬遠の理由になるポイントを聞きました。選ぶ基準のほうは僕が就活生だった頃とあまり変わっていないようですが、敬遠するポイントでは転勤、副業禁止、みなし残業、年功序列、業績のアピール方法などが挙がっており、ひと昔前とはかなり違った傾向が見てとれました。今後、若者に選ばれる企業であり続けるためには、こうした点も念頭に置く必要がありそうです。

(構成=辻村洋子)
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