返却不要のお金の比率を増やすこと

新・旧BIS規制をめぐるバーゼル委員会の動き
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新・旧BIS規制をめぐるバーゼル委員会の動き

2009度に日本企業が公募増資などで調達した資金総額は、7兆6865億円(トムソン・ロイター調べ)。08年度比で6.4倍と急増した。

その主因は、銀行の大型増資である。特に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)の3メガバンクの増資はケタ違いに大きく、昨年6月から今年1月にかけての公募増資を合計すると、実に3兆5500億円。昨年度の資金調達額全体の4割強を占めているのだ。

なぜ、こうして競うように増資に走っているのか。

「(08年秋のリーマン・ショック以降のような)金融危機の再発を防止するため、バーゼル銀行監督委員会が自己資本規制の強化を検討していたからです」(第一生命経済研究所主席エコノミスト・熊野英生氏)

バーゼル銀行監督委員会とは、国際決済銀行(BIS)に同居し、銀行監督の統一指針を策定する機関。国際業務を行っている銀行の自己資本比率を8%以上とする国際統一基準(BIS規制や新BIS規制)を取りまとめることで知られる。それでも金融危機を防げなかった反省から、銀行に新たな自己資本規制を設けることを決定した。メガバンクの巨額増資は、この流れを受けたものだ。

ところで、自己資本とは何か。簡単にいえば、返却する必要のないお金である。企業のバランスシートの右側に、「負債の部」と「純資産の部」の2項目がある。「純資産の部」には資本金や資本剰余金、利益剰余金といった内部留保などがあって、これが自己資本(株主資本)だ。逆に「負債の部」にある社債や借入金など返済が必要なお金が他人資本。自己資本と他人資本の合算が総資本である。