実際に、私の会社でも20年までなら内定が出ていたレベルの人にも、内定が出なくなっています。それは、今まで65点の人を採用していたのに、70点の人たちが武蔵野の求人に応募してくるようになったからです。リーマン・ショックのときも同様の現象が起こりました。不景気のときこそ、中小企業は新卒採用に力を入れるべきなのです。

新卒採用を続けるのはコストも労力もかかり大変だと言う人もいますが、全くわかっていません。新卒採用は、会社を成長させる源泉です。

新卒社員は「何色にも染まっていない」人材です。それは、自社の価値観や文化、仕事のやり方をすみやかに身につけさせられることを意味します。社長の決定や方針を素直に共有し、即座に行動できる人材が増える、それが新卒採用のメリットです。武蔵野も、新卒社員が全社員の50%を超えると、業務改善のスピードが格段に上がりました。

また、新卒採用を続けることで、新卒で入社した社員の成長を促すことができます。

新卒の社員は、新人が入ってきてから伸びるんです。後輩がいると、後から入ってきたあの子に負けたくないって奮起しますよね。また、お世話役なんかを任せると、「なんだ、この先輩は」って思われるのも嫌だから、ますます仕事を頑張るようになります。

別にその後輩が同じ部署にいる必要はないのです。同じ会社の中に後輩がいるということが、新卒社員にとって一番ですね。

未来を考えるから、あえて利益を出さない

利益が出ているのならなおさら、採用活動を控えるべきではありません。絶好調の会社なら、お金を使って未来に備えるべきです。

業績が良いときこそ、未来に投資しなきゃいけません。それなのに、未来に投資しないで、今の利益を大事にしたがる経営者が多すぎます。利益が出ていても、どのみち半分近くは税金に持っていかれるわけですね。だから、前年並みに利益が出ていればいいのです。業績が良くて、前年よりも利益が残せそうなのであれば、その分は全部未来に投資するのが正しいと思っていますし、私はそうやってきました。

「武蔵野さんって、売り上げのわりには利益が少ないね」なんて言われることもありますが、わかってないな、こいつは、って思いますね(笑)。利益を少なくしているのと、少ないのとでは意味が違うんです。面倒だから、いちいち反論しませんが、そういう人は物事が見えていない。