病院に行くのは、現代医療システムに完全に取り込まれること

がん予防では禁煙がとても重要だといわれています。中川さんによると、喫煙者は膀胱ぼうこうがんになる確率が2倍になり、肺がんになる確率は5倍になるそうです。それはデータの解釈としては確かでしょう。

では1日1箱(20本)タバコを吸う人と、3日で1箱吸う人ではどうなのか。20歳からタバコを吸い始め、40歳でやめて、今60歳の人はどうなのか。

タバコとの付き合いは千差万別です。それを1つに丸めて、全体の数値を出して確率を提示しているのが統計データです。

中川さんはタバコを吸わないのに、膀胱がんになっています。タバコと無縁に生きている人でも、がんにかかることがあるのです。

では医療における統計を否定すればよいのかというと、そんなことは不可能です。そう願ったとしても、過去の医療に戻ることはありません。現在、病院に行くというのは、この医療システムに完全に取り込まれてしまうことなのです。これが2020年6月に、病院に行くべきかどうかで悩んだ理由です。

白い飛行機の列からはずれていく黄色い飛行機のイラスト
写真=iStock.com/porcorex
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今は昔の医療と未来の医療の中間の過渡期…

一方で、未来の医療は個人に合った医療にするとか、オーダーメードの医療にするとか言われています。ただしそれをやるには、膨大な情報量が必要です。AI化が進んで、いずれそんな時代がくるかもしれませんが、今は過渡期というか、昔の医療と未来の医療の中間にいるわけです。

その中間にいるときは、どうすればよいのでしょうか。新型コロナの対策では、みんなが勝手なことを言って、どういう対策をたてればいいのかはっきりしないまま1年以上も終息できずにいます。

でもそんなことは、はっきりしなくて当然です。誰かが1つの論理で決めていかなければはっきりさせることはできません。

自分が医療を受けるのも同じです。自分で決めるしかないのです。ところが、普通の人は決めるための十分な知識を持ち合わせていません。

自分で決めるために、セカンド・オピニオン(納得のいく治療法を選択することができるように担当医とは別の医療機関の医師に「第2の意見」を求めること)という制度もありますが、病気について十分な知識がなければ、結局、確率が高いほうを選ぶしかありません。