「実車を目の当たりにすると、いかにも機械然としたエンジンの確かな存在感に加え、大柄な車格を持っているので、350ccながら全然チャチに見えない。うるさ方のおじさんライダーでも納得して乗れる押し出しと雰囲気があるんですよ」(松田氏)
そしてGB350の商品力を語る上で何より欠かすことができないのが、値付けだ。
「税込で55万円。現在、400ccクラスで最も安い車両がSR400の60万5000円、250ccクラスでもスズキ『ジクサー250』の44万8000円ですから、絶対的にも相対的にも非常に安いと言えます」(松田氏)
クラス内で最もリーズナブルだったSR400が、40年以上続くロングセラーモデルでありながら消滅してしまうのは、排ガス規制対策を施したり、装着が義務化されたABS(アンチロックブレーキシステム)を新規で追加するには、コスト面で見合わなくなったことが理由だった。
「排気量のヒエラルキーを覆す」
「ところがGB350は最新の排ガス規制に対応し、ABS付きなのはもちろん、電子制御でスリップを防ぐトラクションコントロール、フルLEDの灯火類と装備も充実しているのですから、その点を考えればより割安感が増します。また同じホンダ内で比較しても、昨年250ccクラスのベストセラーになった『レブル250』が59万9500円~、125ccクラスで大ヒットした『CT125ハンターカブ』が44万円ですから、排気量のヒエラルキーを覆すGB350のコスパの高さがわかっていただけるのではないでしょうか。しかもホンダは9月30日まで、39歳以下の成約者に5万円分のクーポンを配布しているので、対象者は50万円ジャストで購入することができます」(松田氏)
「今は250ccクラスですら50万円で収まらないモデルの方が多数派で、買えるとすればせいぜい150ccクラス。年齢層や期間が限定されるとはいえ、350ccの本格バイクを50万円で手にできるのは、もうそれだけでニュースと言えます」(谷田貝氏)
もちろんGB350のバーゲンプライスは、インド製を中心とした部品やユニットを日本で最終組み立てすることで可能になっているのだが、そこは世界のホンダ、クオリティーコントロールに抜かりはないと見ていいだろう。
「GB350のようにトラディショナルなルックスのバイクは、日本では常に一定の需要があります。だからカタログにラインナップされていれば確実にある程度は売れるのですが、近年は日本専用に開発するための予算が取れ、手頃な価格設定ができるほどの販売台数までは見込めないというジレンマがあります。そんな中、世界最大の市場であるインド向けに作ったモデルが、日本人の好みにもど真ん中な『バイクらしい格好のバイク』だったのは、日本のライダーにとってラッキーだったのではないでしょうか」(松田氏)