そのハイネスCB350を日本にも導入するにあたり、若干の仕様変更とともに、インド向けとは異なるカラーリングと名称が与えられたのが、GB350なのである。
では本来インド市場向けに作られたGB350が、なぜ日本でも大ヒット確実と目されているのだろう。
「ひとつは、古風なルックスにあります。同じような特徴を持つカワサキ『Z900RS』の大ヒットや、ヤマハ『SR400』の根強い人気からもわかるように、なんだかんだ言って年代問わず日本のユーザーの大半に好まれるのは、バイクらしいスタイルのバイクなんですよ」(松田氏)
いわば「テイスト系」モデル
さらに、走行性能を突き詰めたスポーツ系のモデルではないことが、逆にGB350の強みとなっているという。『アンダー400』『タンデムスタイル』といったバイク専門誌の編集長を歴任してきた経歴を持つフリーライター、谷田貝洋暁氏が語る。
「ライダーは必ずしも全員が絶対性能の高さを求めているわけではありません。バイクに乗っても飛ばさず、エンジンの音やフィーリング、ゆったりとしたハンドリングなどを大切にする人もかなりいます。GB350はそうした層が求めている、いわば“テイスト系”のモデルなんです」
現代のライダーの大多数は、寝ても覚めてもバイクのことしか考えられないというタイプではなく、いろいろな趣味を持っていてそのひとつがバイクだという、“バイクも乗る”的なライトユーザー。そうした層はライフスタイルの一部としてバイクを取り入れているので、普段着で乗っても違和感のないバイクを選ぶ傾向にある。
「テイスト系で久々のニューモデルとなるGB350は、そうしたニーズにもピッタリ合致するので、バイク初乗り層、ビギナー層、女性層から年配層までが受け入れられる間口の広さを持っています。中排気量クラスでのテイスト系バイクは長年、ヤマハSR400の一人勝ち状態だったのですが、同車は排ガス規制や安全装備の義務化などの影響で、今年限りの生産終了が決まっています。偶然にもその空白を埋めるタイミングでの登場になったGB350は、SR400なき後の格好の受け皿としても機能するでしょう」(谷田貝氏)
マニアやベテラン勢もうならせる性能と価格
その一方でGB350はライト層だけでなく、マニアや経験豊富なベテランをもうならせる要素を備えている。
「クラシックな形式の空冷単気筒エンジンというだけでなく、ピストンがシリンダー内部で長く上下動するロングストロークの設計になっているので、独特のドコドコドコ……という強い鼓動を堪能できます」(谷田貝氏)