日本は女性差別国か否か「指標によって、結果が異なる理由」

なぜ、このようなランキングの差が生じるか。その背景に指標のとり方の違いがある。例えば……。

・世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」では、大臣の男女比率や管理職比率など政治・経済分野のウエートが高い。

・途上国の社会開発を使命とする国連開発計画の「ジェンダー不平等指数」では女性がどれだけ安全に出産できる環境かを重視しており、「妊産婦死亡率」や「未成年出生率」などの指標が入っている一方、世界経済フォーラムには入っていない。同フォーラムはその代わり、「新生児の男女比率」と「健康寿命の男女差」を健康分野の指標としている。

・日本の「新生児の男女比率」は1位、「健康寿命の男女差」は72位。

以上の傾向からしても、私は、同フォーラムが出産リスクや寿命そのものはスルーして、健康の男女格差をこの2つの指標(「新生児の男女比率」「健康寿命の男女差」)で代表させるやり方に大きな疑問符をつけたい。

はなから構成指標の妥当性などが議論されることはなく、もっぱら日本は女性差別のヒドイ国だと主張したい場合の絶好のデータという観点だけで世界経済フォーラムの「総合ランキング」が引用されているように感じられなくもない。

この手のランキングは、構成する複数の指標を加重平均して作成される総合指標によっており、指標の選択やウエートづけは作成者の考えによっているので、結果も恣意的になりがちである。

(※私が主宰している「社会実情データ図録」サイトでは極力、そうした総合指標のランキングは取り上げないようにしている)

例えば、複数指標を総合化した世界各国や都道府県の幸福度ランキングが複数発表されているが、それがOECDの作成する権威あるランキングであっても、なるべく、無視するようにしている。幸福度を「そうであれば幸福であるに違いない」という観点から、所得、生活環境、医療介護、格差、自然などの状況の良好度を総合して順位づけしている場合がほとんどであり、「それで幸せを感じるのかは人それぞれ、国それぞれなのだから放っておいてくれ」と言いたくなる。

そして、幸福度を測るなら、幸福かどうかを聞いた意識調査によるのが一番だと思っている。