男子学生の発案で行われた無償配布イベント

2019年9月、ブルターニュ地方のレンヌ第2大学で5日間、生理用品が無償で配布された。学生委員会の投票を経て、学生の共済金4万2000ユーロを使って行われたものだ。提案したのは副会長の男子学生ファビアン・カイエ氏だ。「私たちの大学では、42%の学生が奨学生。経済的に困っている人たちは多い。通学にかかる交通費、食料、生理用品の中でどれかを選択しなければならないようなことはあってはならない」と語る。

ロックダウン下では通常よりも生理用品を必要とする人々が増えた。Règles Élémentairesは、何度も使える月経カップや洗える生理ナプキンの使用方法を教えるアトリエも開いている © Règles Élémentaires
ロックダウン下では通常よりも生理用品を必要とする人々が増えた。Règles Élémentairesは、何度も使える月経カップや洗える生理ナプキンの使用方法を教えるアトリエも開いている © Règles Élémentaires

レンヌ第2大学では、bioコットン製のナプキンまたはタンポン18個が入ったキット9000セットが無償で配布され、約4000人の女子学生が列を作った。また、学生にとっては高価な、洗える再利用可能なナプキン(通常日本円約1940円から2580円)や月経カップ(約2580円)1300個も配布された。学生たちは、「普段は、倹約のために安い生理用品を使っているけれど、今回はちょっと高価なbio製品を試す良い機会」とうれしそうだっだ。さらにこのイベントを機に、レンヌ市と大学が共同出資し、30台のbio生理用品配布機も設置した。

この時点では、全国の大学のうちの8.5%が無償配布を試行していただけだったが、こうしたイベントは、学生同士が生理の貧困や生理に関する自分の経験をオープンに話す機会にもなった。

苦しむ女性ほど助けを求められない

フランスでは、高校生までは親が経済的に支援するが、大学に入ると「もう大人」という意識になるので、「経済的に苦しくても親に頼りたくない」という学生も多い。また、困窮している女性に限って、自分からは生理用品の無償配布イベントに来場しないという実態も明らかになった。彼女たちの多くは、ネット環境が悪い地域に住んでいて情報を逃しがちなうえ、「貧困プラス生理」という精神的に落ち込む状況が重なって、わざわざ人目がある場所に助けを求めに行くのを避ける傾向があるからだ。

日本でも一部の自治体では、防災備蓄の生理用品などを無償で配布しているが、東京都豊島区の場合は受け取り時の本人確認が不要で、口頭で求めなくても済むように、窓口に置いてあるカードを指し示すだけでよいという細かい配慮をしている。フランスでも、本当に困っている人の手に届けるためには、人目を気にせず取りに行ける環境をつくることが重要だろう。