2016年に始まった生理用品の税率軽減
ここに至るまでには、各地で地方自治体や学生たちによって、生理の貧困撲滅キャンペーンや、生理用品の無償配布会が進められてきたことを強調したい。国の発表は、こうした下からの突き上げが功を奏したものだと考えられる。
発端となったのは2015年、Règles Élémentaires(基本的な生理)という生理の貧困に関するキャンペーンを行う市民団体が、新品の生理用品を集めてホームレスや貧困層への配布を始めたことだ。同時に、北米で起きた運動にならい、Georgette Sandというフェミニスト団体が、生理用品にかかる消費税(通称タンポン税)の軽減を求める署名運動やデモを始めた。その結果、2016年には生理用品の消費税が20%から5.5%に下げられたが、タンポン1箱につきごく少額安くなったのみで消費者の生活にはほとんど影響がなかった。
2017年からは、学生健康保険が、生理用品購入費用の一部として月額20ユーロから30ユーロ(2560円から3870円)を加入している学生に返還するようになった。しかし、女性1人当たり、生理用品に加えて生理用パンツ、貧血予防のための鉄分や生理痛薬など年間平均600ユーロ(約7万7200円)を出費していることを考えると、微々たるものでしかない。
生理の貧困は学業にも影響
2019年3月、IFOP(フランス世論調査)が「170万人の女性が生理の貧困に悩んでいる」と発表した。10%の女性が「経済的な理由で生理用品を使用できないことがある」、また低所得者の39%が「十分に生理用品がない」と答えている。彼女たちの多くは、キッチンペーパーやトイレットペーパーを厚く重ねたり、端切れでタンポンを作ったりしていると明かした。
また、12%の女性が、「生理用品がないために学校に行けなかったことがあった」と回答。必要な生理用品を買えないことで自信を失い、精神的に不安定になったり、安価で品質の悪い生理用品を使用した結果、炎症を起こして医者にかかったりする学生も珍しくないことが明るみに出た。
「生理の貧困は学業や健康に影響を与え、長期的には国民の平等を脅かす」という認識が広がり、生理用品の無償化へ向けた無償配布イベントの試行が、各地方大学のイニシアチブで始まった。