専門家がその分野の英語を教えるべきだ

どのような専門用語が重要かは、分野によって違う。その分野の専門家でないと教えられない。専門用語に関する限り、一般的な英語の先生は役に立たない。

一般的な英語の先生は、挨拶の英語や英文学を教えることはできるが、ある分野でどういう専門用語が使われるかは、教えられない。だから、専門用語の英語は、英語の先生ではなく、その分野の先生に習わないと、駄目だ。

専門用語は、個々の単語だけではない。どのように表現するかも重要だ。これらも、やはりその分野で英語を使って仕事をしている人でなければ教えられない。つまり、英語のユーザーが英語を教える必要がある。

以上のようなことは、専門教育を英語で受けていれば、自然に身につく。しかし、日本では高等教育の最終段階まで日本語が用いられているので、そうならない。外国語である英語を習得しなくとも専門知識が得られる点では恵まれているが、世界標準からは、外れてしまっているのだ。

英文学者が英語を教える日本の大学の大問題

これは、英会話学校やテレビ、ラジオ番組に限った話ではない。大学の教養課程での英語の授業が、同じ問題に陥っている。その原因は、大学の教養課程の英語の先生が英文学の専門家であることだ。

大学の教養課程になれば、他の科目は専門分野ごとになる。たとえば、将来、法律の専門的な仕事をする学部と、経済の専門的な仕事をする学部、エンジニアリング、サイエンスなどの分野に分かれる。これらではそれぞれ違う英語が必要になる。

大学の教養課程の英語の時間になぜ英文学の先生が出てきてしまうのか。これこそが大問題だ。大学内部の複雑な事情があって、簡単には変えられないことだけは間違いない。

つまり日本人の多くは、社会に出るまで、仕事の上で必要な英語を勉強する機会がなかったということになる。

繰り返すが、われわれが仕事の上で英語を使うためには、挨拶英語だけでは不十分であって、その分野の特殊な用語、特殊な表現を覚えなければならないのだ。日本人のビジネスパーソンが実際の仕事で英語を使えない、かなり大きな理由が、ここにある。