そもそも「住む」という概念が不要

都会はコスパがいいけれど、地方も安く楽しく暮らせる。

では、どちらに住むのがいいか。

そんなものはあなた次第、どこでもいい、が答えだ。

ハンモック上の遠隔作業
写真=iStock.com/show999
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ホテル暮らしをしていることからわかるように、僕はそもそも「住む」という概念が不要だと考えている。これだけテクノロジーが発達した時代に、なぜみんな「住む」ことにこだわるのだろう。

好きなときに、好きなところへ行けばいいではないか。そんな自由は、誰でも持っている。

僕がそういうことを言うと「誰もがみんな自由に移動できるわけじゃない」「地場産業や農林水産業の従事者はどうなる」といった批判が寄せられる。

移動できるかどうかは、たんに本人のマインド次第だ。本人が移動したいと思えばできるし、できないと思い込んでいるならできない。

地元の産業が心配だから移動できないというのは言い訳だ。

漁師として働いている人が、漁師では食えなくなったらどうすればいいのか。漁師を辞めて別の仕事をすればいいだけだ。

農家として食えないというのなら、農家を辞めればいい。農林水産業はその場所に存在する社会資本や人間関係を活用しているわけだが、その場所を離れても生きていく手段はいまならいくらでもある。

だいたい、ある地方の産業が消えるかどうかなどいちいち心配するような問題ではない。もしその産業によって利益を上げられるのであれば、いくらでも代わりの事業者が参入してくるものだ。

新しい仕事のチャンスはいくらでも生まれているし、利益を上げる方法も多様化している。今後、テクノロジーを活かして、地方でビジネスをやろうとする人たちも増えてくるだろう。

移住で発生する問題はテクノロジーと政治的決断で解決が可能

住み慣れた土地から離れられない高齢者はどうするか?

そうした問題も、テクノロジーと政治的決断で解決が可能だ。

例えば、人口流出が続く地方では、公共交通機関が維持できなくなっている。そうした場所でも、ライドシェア(自動車の相乗りをマッチングするサービス)を解禁すれば住民の利便性を保ちながら、タクシー会社が利益を上げる仕組みは作れる。

さらに、自動運転技術の実用化も目前に迫っている。買い物がしたいというなら、無人ロボット車による宅配サービスという手だってある。

通信網や電力網も、これからはどんどんコストが下がっていく。これまでとまったく同じアナログの郵便サービスを全国津々浦々まで展開するのは無理にしても、ネットサービスで置き換えることは可能だ。

携帯電話の基地局も、すべての地方にひとつひとつ建設する必要はなくなる。アメリカの民間宇宙開発企業スペースXは、スターリンク計画と呼ばれる衛星インターネットアクセスサービスに着手していて、すでに数百もの通信衛星が地球の低軌道を周回している。

最終的に万単位の通信衛星が低軌道を囲むことになれば、地球のどこにいてもネットへの高速アクセスが可能になる。

低軌道衛星計画はスペースXだけが開発を進めているのではないし、ほかにも成層圏に自動航行の飛行機を飛ばして通信網を構築するプロジェクトをソフトバンク子会社のHAPSモバイルなどが進めている。