自由を詠んだ歌だが、同時に切なくもなった

皇室の恒例行事である「歌会始の儀」が3月26日、2カ月遅れで開かれた。お題は「実」。天皇陛下は「人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の至るを祈る」、皇后雅子さまは「感染の収まりゆくをひた願ひ出で立つ園に梅の実あをし」。お二人とも、新型コロナウイルスの収束を願う気持ちを詠んだ。国民の気持ちと重なる歌なのだが、それよりも注目されたのが秋篠宮家の長女眞子さまの歌だった。

烏瓜からすうりその実は冴ゆる朱の色に染まりてゆけり深まる秋に」

「良き便り」または「誠実」だという烏瓜の花言葉に「深まる秋」などを重ね、小室圭さんへの愛や結婚を読み解く。そんな記事が多かった。コロナ禍で国民と直接触れ合えない皇室にあって、小室さんだけが消費される。それが昨今の「国民と皇室」のリアルなのかもしれない。

皇居に入られる秋篠宮家の長女眞子さまと次女佳子さま=2020年2月23日、皇居・半蔵門[代表撮影]
写真=時事通信フォト
皇居に入られる秋篠宮家の長女眞子さまと次女佳子さま=2020年2月23日、皇居・半蔵門[代表撮影]

他方で、秋篠宮家の次女佳子さまはこう詠んでいる。

鈴懸すずかけの木から落ちにし実を割りてふはふは綿毛を空へと飛ばす」

歌については全くの素人だが、一読して、自由を詠んだ歌だと思った。そこに佳子さまの強さを見て、同時に切なくもなった。長く皇室をウオッチしてきたからだ。

「幼い頃は手紙にスマイルの絵を描いてくれた」

歌から浮かぶのは、綿毛がフワフワと舞っている光景。が、単に舞っているのではない。「実を割りて」「空へと飛ばす」という行為の結果、舞っている。意思を持って行動する。それが佳子さまで、空とは自由の象徴。だから、この歌は自由を求める意思の表れ。そういう歌で「歌会始」の勝負に出る。佳子さま、なんて凛々しいんだ。私はそう受け止めた。

私の“佳子さま贔屓”の始まりは2014年12月、成年を迎えるにあたっての記者会見で、佳子さまが紀子さまをかばったのだ。質問は、「ご家族はそれぞれ、どのような存在ですか」。無難な答え方もあったはずだが、佳子さまはまず秋篠宮さまについて語り、それから紀子さまについてこう語った。

「母は、週刊誌などではさまざまな取り上げ方をされているようですが、娘の私から見ると、非常に優しく前向きで明るい人だと感じることが多くございます。幼い頃は手紙にスマイルの絵を描いてくれたことが、よく印象に残っています」。