ウェイボーへの規制を強める中国当局

映画やテレビの内容も厳しく検閲されている。しかし、近年誕生したネットメディアについては伝統的メディアほどの規制はいまだに整備されていない。また、メディアの商業化改革が進むなか、出資という形でIT企業と伝統的メディアが提携するケースも増えている。

きっかけは不倫スキャンダルではあったものの、自分たち以外の勢力が世論操縦を可能にする力を持っている。この事実が中国共産党に強い警戒感を引き起こした。昨年はロシアや中国が米国のネット世論に干渉し、米大統領選に影響力を行使しようとした疑惑が注目されたが、中国民間企業が中国国内で世論操縦を可能にする実力を擁していることを発見し、強い危機感を覚えた。

米紙ウォールストリートジャーナルによると、不倫事件を受けて中国共産党中央ネットワークセキュリティ・情報化委員会弁公室が策定した非公開の報告書では、アリババが「世論操作のために」資本を利用していると指摘された。そして、6月には中国国家インターネット情報弁公室は、「(不倫事件において)ネットの情報伝播を秩序に干渉」したとして、微博に対応を命じ、ホットトレンドランキング機能を1週間にわたり停止するよう命じた。

「資本による世論操縦のリスクを断固抑止しなければならない」

だが、この処罰だけでは中国共産党の懸念は解消されなかった。メディアと世論の監視を担当する、中国共産党中央宣伝部の徐麟(シュー・リィン)副部長は11月19日に登壇したイベントで、「融合的発展に名を借りて、中国共産党の領導を弱体化させる動きを断固防止しなければならない。資本による世論操縦のリスクを断固抑止しなければならない」と、さらに追撃する。

この言葉に呼応するように、昨年12月の中国共産党中央政治局会議および中央経済工作会議、今年3月の全国人民代表大会政治活動報告には「独占禁止の強化と資本の無秩序な拡張の抑止」という言葉が盛り込まれた。

「“資本の無秩序な拡張の抑止”という、一見して独占禁止法との関連が不明瞭な文言がなぜ盛り込まれたのか。この一節は徐副部長の発言と関連していることは明らかだろう。重要な政治方針に盛り込まれたことを見ると、世論掌握の分野でプラットフォーム企業が強い影響力を持ったことに、中国共産党が強い危機感を抱いていることがわかる」(川島教授)