政治家やマスコミはコロナ対策として「ステイホーム」を呼びかけてきた。しかし、その結果、健康不安に陥る人が増えている。長尾クリニック院長の長尾和宏さんは「テレビが国民を殺していると言ってもいい。今、国民が健康状態を保つために必要なのはテレビから離れて、とにかく歩くことだ」という――。

※本稿は、長尾和宏『コロナ禍の9割は情報災害 withコロナを生き抜く36の知恵』(山と渓谷社)の一部を再編集したものです。

ステイホームで社会的孤立を感じる男性
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ステイホームで浮き彫りになった、歩かない弊害

コロナ禍で定着したスローガンの1つが、「ステイホーム」。

新型コロナから命を守るために家にいよう、というものです。第1波が収束したあとも、ステイホームの空気は根強く、「旅行をした」「どこそこへ遊びに行った」などと気軽に言いにくい雰囲気がまだまだ漂っています。

日本人はとてもまじめなので、飼い主に「ハウス!」と言われた犬が自分のハウスに入ってじっと待っているように、偉い人に「ステイホーム!」と言われれば、多くの国民はその命令に従順です。それは日本人の美徳でもありますが、その美徳があだとなることもあります。

先述したように、まじめにステイホームを守り続けている人ほど、生活習慣病が悪化し、筋肉が落ち、かえって健康を損なう可能性が高い。特に高齢の人は、1カ月も真面目にステイホームを続けていれば、驚くほど衰弱します。

まず、外に出て体を動かさなくなると、食べることが唯一の気分転換、ストレス発散になりがちなので、てきめんに太ります。太れば、血糖値も血圧もコレステロール値も、さまざまな血液検査の数値が悪くなります。だから、生活習慣病が軒並み悪化するのです。

また、家にこもってじっとしていると、筋肉は委縮し、関節も固まり、転倒や骨折を起こしやすくなります。人と会わない、外に出ない刺激のない生活を続けていれば、認知機能も低下して、物忘れもひどくなります。もともと認知症のある人は、妄想や抑うつ、暴言、意欲の低下といった周辺行動がひどくなります。