不良がかった若い一般人
(2)オレオレ詐欺などの特殊詐欺に従事する不良がかった若い一般人。カネが欲しく、真っ当に働きたくはないが、暴力団や本格的な半グレにもなりきれない(なりたくない)層。2018年に大量検挙された大阪の「アビス」グループのように年齢的にも若い層です。彼らが暴力団の走狗となってオレオレ詐欺に加担する傾向があります。現在、筆者が支援にあたる保護観察中の青少年の多くが、このパターンです。
ただし、カテゴリー(1)の下で実行部隊として使い捨てにされるケースもあるようで、カテゴリー(1)から「誰かこのシノギやる奴いないか」と言われ、「おれらがやります」と手を挙げるといった具合でシノギの実行を請け負い、犯罪で得たカネの一部を上納します。
もし、そのシノギでしくじったら、トカゲの尻尾切りで、逮捕、即退場となる使い捨てグループです。2019年11月10日の静岡新聞に、「詐欺『受け子』枯渇か外国人や女性、少年に移行警察の包囲網強化で人材、資金不足」という見出しの記事が掲載されました。
この記事によると、静岡県内で発生した特殊詐欺事件で「受け子」と呼ばれる現金やキャッシュカードの受け取り役が最近、首都圏の若者から、被害者の近隣などに住む少年や女性、外国人に移行する傾向が強まっているとのこと。そのような背景には、県警などの包囲網の強化で詐欺グループが人材と資金の不足に陥り、コストの削減を図りながら末端の「受け子」を賄う窮状が透けて見えます。
他県警が逮捕した「受け子」らに行った調査では、半数以上が約束された報酬を受け取っていないと回答しているといい、詐欺グループが末端の「受け子」を軽視している実情が浮き彫りになったという報告がなされています。
正業を持っている集団と元暴アウトロー
(3)(1)、(2)に比較すると、一見マトモな(?)半グレといえます。正業を持っている集団です。多くが喧嘩上等で腕っぷしの強さを競う観のある地下格闘技のような団体に所属し(あるいは過去に属していた)、ウラとのコネクションを築きやすい位置にいます。
ITベンチャーの若い社長などのボディーガード的な役割から、徐々にITビジネス関係に詳しくなりビットコインなど金融系取引で食っている、あるいはオーナーとして、高額請求傾向のある風俗・飲食店などを経営する小集団を指します。ただし表向きの正業の裏で、カテゴリー(1)の半グレなどと通じ、ビジネスのようにシノギをする集団です。NHKスペシャル『半グレ反社会勢力の実像』に登場した2人は本来これにあたります。
(4)最後の元暴アウトローは、極悪の暴力団並みに、かなり厄介です。近年、暴排条例の影響により、暴力団離脱者は増加傾向にあることを見てきました。しかし、職業社会に復帰して更生する人数は僅少です。前編で述べたように、暴排条例の元暴5年条項で暴力団員等、いわゆる暴力団関係者とみなされ、社会復帰できなかった人が元暴アウトローとなります。行き場のない彼らは、結局、覚せい剤の売買やヤミ金、オレオレ詐欺、下手をするとカテゴリー(1)の半グレの配下となったりして、悪事を重ねることになります。