失恋したら、毎日10分でも散歩をするといい

例えば、失恋をして「もう人生終わりだ。この先に良いことなんかないに決まっている」と、あなたが思い込んでいるときを考えてみてください。

茂木健一郎『緊張を味方につける脳科学』(河出新書)
茂木健一郎『緊張を味方につける脳科学』(河出新書)

もう一度、相手が戻ってきてくれれば、問題は解決するのでしょうが、その可能性は低い。つまり問題は解決しない。そのことは、わかっているので悲観的になっている。そんな場合、「いいや、何を言っているんだ、良いことはあるに決まっている」と言葉で言っても、意識はなかなか説得されないものです。

そこで、意識を説得するのではなく、例えば、毎日無理矢理にでも少しだけ外に出て、散歩をする。たった10分でも、家の周りを一周するのでもいいでしょう。

木々の匂いを嗅いだりしてリラックスしてくると、脳の「デフォルト・モード・ネットワーク」が活性化されて、不思議と気持ちがすっきりしてくることがあります。

デフォルト・モード・ネットワークとは、何かの課題に集中しているときよりも、休息しているときに強く活動し、記憶や感情の整理に重要な役割を果たしていると考えられている回路です。

「意識から比較的自由なシステム」に働きかける

パートナーは戻ってこないし、問題は解決されていないにもかかわらず、毎日散歩をしてみるだけで、体が元気を取り戻し、すっきりした気持ちがして「これからも、良いことがあるかもしれない」と自然に思えてくるようになるのです。

無意識や身体は、脳の中では、デフォルト・モード・ネットワークや、小脳、大脳基底核という、前頭葉や側頭連合野とは別のシステムによって司られているので、意識的な「幻想」から比較的自由です。幻想に支配されて、現状維持を選び、緊張のない生活になってしまっているのなら、大事になるのは、無意識や身体と言えます。

そのような意識のコントロールから比較的自由なシステムに働きかけて、できないことができる、自分で自分を裏切るという経験をすることがとても大事なのです。

つまり、「扁桃体」と「前頭葉」、「無意識」と「意識」のバランスを考えていくことが、緊張を克服するための最大の鍵となるのです。

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