良い借金とは?

さて、ここまでは借金の本質ということについて考えてきました。ではそれを踏まえて「良い借金」とは一体どんなものなのでしょうか? それはごくシンプルに言えば「金利」という費用を支払ってもそれを上回る利益が得られる場合です。

大江英樹『一生お金で困らない人生の過ごし方』(すばる舎)
大江英樹『一生お金で困らない人生の過ごし方』(すばる舎)

企業であればこれはとても明快です。仮に企業が新しい事業をするとしましょう。見込める利益率は年10%とします。自己資金が1000万円あって、そのお金のみで新しい事業に投下すると利益は100万円です。ところがその企業が銀行から1億円借り入れて新しい事業をしたらどうでしょう。その場合の借り入れ金利が5%だとすると、費用は1億円の5%で500万円かかりますが、借りた1億円が生み出す利益は1000万円ですから金利を差し引いても500万円の収益となり、自己資金でやる場合よりも5倍も収益は多くなるのです。

ところが個人の場合、自営業者でない限りは事業をするためにお金を借りるわけではありません。住宅を買うためにローンを組む、自動車の購入にローンを使う等、何らかの商品やサービス購入にまとまった資金がいる時に借りることになるでしょう。

しかしながらここでも経済の大原則「費用を上回る便益があるかどうか」は考えるべきなのです。例えば家を買う場合の便益とは何でしょう? 「年をとっても自分が住める家があるという安心感」、「くつろげる自分の家という心のやすらぎ」といった言わば心の便益が大きいと判断するならローンを組んで家を買えば良いということになります。よく「持ち家」か「賃貸」か、で両派に分かれて激しい議論がおこなわれていますが、どちらが絶対に良いということではなく、これはあくまでも「自分の家」というものに対してどれぐらいの価値を持つかという人生観の問題ですから、人によっては借金をして買うことが合理的にも不合理にもなります。

旅行や車のために借金をするかどうか

同様に旅行に行ったり、自動車を買ったりする場合にローンを利用するのは「今すぐ行きたい」とか「今すぐ車が欲しい」けど、今お金を持っていない場合にどうするかという判断になります。「やはり欲しい物は欲しい」といってコストを払っても借金するのか、「そのコストは無駄だから我慢して貯めてから買おう」と考えるかはやはりその人の考え方次第です。

ただ、私は何でもかんでも借金をして手に入れるべきというのは少し考えた方が良いと思います。なぜなら人間の欲望には限りがないからです。欲しい物を手に入れてもまた新たに欲しい物が出てくる、そしてそれを繰り返していると借金が膨れ上がってしまいかねないからです。