自殺の背景にあった「戦争の記憶とジェンダー規範」

男の中の男。潔い日本男子。自殺した男性もその一人だったという予科練(海軍飛行予科練習生)は、多くの特攻隊員を出したことで知られている。「13カ月目の自殺」の当事者たちの発言には、戦争の記憶やナショナリズムとも絡み合いながら、「男らしさ」に関わる意識が端々に顔をのぞかせていた。

小島庸平『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』(中公新書)
小島庸平『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』(中公新書)

多重債務に陥った男性がしばしば自殺を選んだ背景には、家族に迷惑はかけられないという「家長」としての責任意識とともに、潔さや自己犠牲、「男らしさ」といった、男性に期待される固有のジェンダー規範が色濃く影を落としていた。戦後日本に特有の「『男らしさ』の価値体系」が、返済に行き詰まった男性債務者たちに「13カ月目の自殺」を選び取らせていた。

家出や自殺に至らずとも、多重債務に陥った人びとが一種の異常な精神状態に陥ることは、男女を問わず決して珍しくなかった。毎日のように借金返済に追い立てられれば、金を返せない不甲斐なさと情けなさで自己否定に陥り、将来への不安から精神的な問題を抱え込むのは無理からぬことである。

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