Jリーグに訪れたマネーボールについて考える機会
J1に所属するクラブの間の収入格差は2015年~2018年の4年間で4倍から4.2倍とさほど開いていない[図表1]。それは最も裕福なクラブの収入だけでなく、その他のクラブの収入も同様に伸びているからだ。
Jリーグも2018年には25周年を迎え、Jリーグはもちろん、地域におけるクラブの存在価値もかなり向上した。その結果、サッカークラブを活用した企業のマーケティング活動も様々な面で機能し始めた。この年、収入トップだったヴィッセル神戸はFCバルセロナでプレーしていたアンドレス・イニエスタを獲得し、スポンサー収入、入場者収入、グッズ収入を大幅に増やした。一方、その年にJ1に昇格したV・ファーレン長崎は、J1でもっとも収入が少なかったが、それでも前年の総収入11億2000万円から23億円と約2倍に増やした。前年起きた経営危機から地元長崎のテレビショッピングで有名なジャパネットグループの一員となり、ビジネス面における力強い味方をつけることができたからだ。
少ない人件費で上位に食い込むのは簡単ではない
しかし、これはコロナ禍以前の状況だ。今後もこれまでどおり右肩上がりで収入面が伸びていくことに対しては、少なくてもここ数年は悲観的にならざるを得ない。一方、人件費を見ると、同じ期間にチーム間の格差が4.2倍から5.5倍に開いた。これは神戸のイニエスタの高額年俸分が大きく影響しているので、神戸ではなく、この年の選手人件費2位だった鹿島の31.6億円を当てはめると格差は3.9倍だ。
つまり、J1では収入も、人件費の支出も約4倍程度の開きがあることになる。
選手人件費がいかに重要か、最も少ない人件費で降格圏に入らなかったのは、2016年の甲府だけしかないという例からも明らかだ。それ以外はすべて降格圏だったことから、少ない人件費では、上位に食い込むのは簡単ではないことがわかる。しかし、一番お金を持っているチームが一番強いかというと必ずしもそうはなっていないという点は興味深い。収入面において日本のサッカー界を引っ張り続けていた浦和レッズの順位は2015年3位、2016年2位、しかし2017年には7位にまで落ち込んでいた。日本サッカー界でトップの収入を誇り、初の総収入100億円までにあと一息というところまで来た神戸は10位という成績だった。