マネーボールからマネーサッカーボールへの道

昇降格の無いクローズドリーグで運営されているプロ野球と異なりJリーグは順位によって昇降格があるオープンリーグで運営されている。所属リーグが一つ上がることは競技面におけるステータスだけではなく、事業面においても大きなベネフィットがある。

森本美行『アナリティックマインド』(東洋館出版社)
森本美行『アナリティックマインド』(東洋館出版社)

Jリーグから各リーグに所属しているすべてのクラブに一律で支払われる事業協力配分金が、J3では3000万円だがJ2ではそれが1億5000万円と5倍にアップする。地方のクラブが真水の収益を1億円以上増やすことは決して簡単ではない。

J2からJ1に昇格すると事業協力配分金は3億5000万円にとさらに増加する。J1で優勝したチームには、賞金3億円に加えて、日本サッカーの水準向上と普及促進などに使われることを前提とした理念強化配分金が3年間で総額15億5000万円を受け取ることができる。

つまり、J1で優勝すると、優勝賞金3億円、一部売掛金となるが理念強化配分金15億5000万円、そして事業協力配分金3億5000万円、合計22億円の収入を得ることができる(2020シーズンは新型コロナウイルスの影響で通常とは異なる)。

DAZNの放映権料収入で資金繰りの重要度が増した

これだけの金額が、各クラブにもたらされるようになったのは2017年に英国のパフォーム・グループ(現DAZN Japan Investment株式会社:以下、DAZN)とJリーグとの間に10年間で総額2100億円とも言われる巨額の放映権契約が交わされたためだ。1年あたり平均約210億円という放映権料は、2012年から2016年まで年間50億円で放映権契約を結んでいたスカパーJSATの約4倍の金額だ。

DAZNが支払うこの高額の放映権料は、Jリーグの試合の魅力が高まり、より多くのDAZNの契約者が増えることにより回収される。つまりチーム強化による収入増、収入増によるさらなるチーム強化。結果、DAZNを通して視聴者が増加し、事業として成立するというWIN-WINの関係が成立することとなる。

この循環にうまく乗るためにこれまで以上に今手元にある資金を“賢く”使うことが重要になってきた。