高額の人件費をチーム強化に使えなかった4チーム

マネーボール風に人件費と順位との関係を見てみよう[図表2]。

2015~2018年におけるJ1クラブの人件費との関係
アナリティックマインド』(東洋館出版社)より

このデータを見る限り、人件費を多くかけているチームが必ずしも良い成績をあげているとは言えない。

2015年から2018年シーズンを見ると、2015年の湘南を除けば人件費が少ないチームは下位の成績という傾向が見られる。一方、人件費を多くかけているクラブが成績上位という傾向はあまり見ることができない。クラブ全体を見渡すと2015年から2018年シーズンまでは3年連続で順位と人件費との間の相関値は0.6~0.7だったが、2018年シーズンは0.19と相関関係が無かった。

2018年シーズンの人件費が突出して多かった神戸が10位、人件費が浦和に次ぐ4位だったが、名古屋が15位、人件費5位の柏が17位でJ2に降格、人件費6位の鳥栖が14位と、これらの4チームが大幅な外れ値となってしまったため、全体の相関関係が崩れたことになる。つまり、競技成績という面に限れば、神戸、名古屋、柏、鳥栖は高額の人件費をチーム強化のために使うことができていなかったことになる。一方で、甲府、仙台、湘南は少ない人件費を効果的に使えていた例だ。

最も効果的に人件費を使ったチームはどこか

このように人件費額が多い順位と実際の順位とのギャップを比較して、Jリーグマネーボールランキングを出した[図表3]。

各J1クラブの人件費の使用効果と1勝あたりの人件費
アナリティックマインド』(東洋館出版社)より

対象チームは2015年から2018年の4年間にJ1でプレーした24チームだ。シーズンごとに(実際の順位)-(人件費の多い順位)を出し、各シーズンを足し、期間中24チーム中、もっとも効果的に人件費を使ったチームと、人件費を効果的に使えなかったチームを5チームずつ選び、それらのチームが1勝するのにいくらの人件費をかけたのかについても算出した。