選手の自然な姿を発信すると、ファンから大きな反響があった

「弱い」「地味」「首都圏のローカル球団」

ともすれば首都圏の大手主要メディアからは埋没しがちな千葉ロッテマリーンズにとって、球団自らが情報を発信できるSNSの発達は大きな追い風となりました。

ブランド力を高め、ファンを増やすには、メディアの力が必要不可欠です。しかしテレビや新聞、雑誌にはどうしても「尺」や「スペース」の限界があります。

シーズン中は、ニュースの内容は試合結果や成績が中心になりますから、「千葉ロッテマリーンズ」というチームの特色を伝えるチャンスにはなかなか恵まれません。

一方のシーズンオフは、たとえば「入団した注目新人に親会社・ロッテのお菓子工場を見学してもらう」など、画になるニュースがあればテレビも尺を割いてくれますが、限られたスポーツニュースの枠を多くの競技、そしてプロ野球12球団で取り合うとなると、千葉ロッテマリーンズをまるまる取り上げていただく機会にはなかなか恵まれないのが実情です。

「意外性」「日本一の応援」「突飛なファンサービス」というブランドの軸を定めたものの、広く打ち出す機会がないのでは宝の持ち腐れに終わります。

そこで味方になってくれたのが、球団自らが情報を発信できるSNSです。

2013年に公式YouTubeチャンネルを開設。試合前に円陣を組んで声を出したり、勝った試合後にロッカールームでリラックスしながら試合を振り返ったりといった、選手の自然な姿を発信すると、ファンから大きな反響をいただきました。

ダッグアウトベンチに置かれたバット、グローブ、ヘルメット、ボール
写真=iStock.com/LifestyleVisuals
※写真はイメージです

YouTube開始後、数年にわたり12球団で再生回数トップ

いずれも、いくら熱狂的なファンでも、テレビを見たり球場に来たりするだけでは見えない部分。球団広報自らが世の中に発信することで、ファンも「この選手、試合以外ではこんな一面があるんだな」と感情移入しやすくなったことでしょう。

山室晋也『経営の正解はすべて社員が知っている』(ポプラ社)
山室晋也『経営の正解はすべて社員が知っている』(ポプラ社)

また「ドラフト会議舞台裏」と題した動画では、私をはじめとするフロント陣と監督がどのような意気込みで会議に臨んでいるかが伝わるはずです。

現役選手が一切映っていないこの動画もやはり、「千葉ロッテマリーンズはどのような球団か」を知っていただくきっかけになるのではないでしょうか。YouTube開始当初の数年は、12球団で再生回数トップを走っていました。今ではインターネット関連が親会社の本業である横浜DeNAベイスターズや東北楽天ゴールデンイーグルスなどには発信力で劣るかもしれませんが、「何をブランドとするか」から考えながら、手探りで始めたYouTubeチャンネルにしては、面白いコンテンツが揃っていると自負しています。

これからもさらに、面白いコンテンツがどんどんアップされていくことでしょう。

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