仕送りを含めた教育費負担が大きいのは「都心より地方」
こうした教育費の状況を前提として、教育費比率の地域分布を見ていこう。
毎月行われている家計調査の年平均の値で教育費の現状を見てきたが、地域状況については、県庁所在市・政令市のデータしか得られないうえ、各市せいぜい100世帯ほどのサンプル数しかないので標本誤差も大きい。また地域別だと世帯主の年齢とのクロス集計もできない。
このため、より立ち入った都道府県別などの区分のデータまで得られるよう、総務省統計局では毎月の家計調査に加えて、家計調査の拡大版というべき全国家計構造調査(※:前回までは全国消費実態調査という名称)を5年おきに行っている。
※全国家計構造調査では、都道府県別には人口規模に応じて370~1630世帯と集計世帯数が異なるが、それでも家計調査よりサンプル数が多い。ただし、家計調査と異なり年間平均ではなく調査月10~11月の月平均値しか得られていないという点には気を付けておくことが必要である。
このほど2020年の全国家計構造調査の結果が公表されたので、これを使って都道府県別の教育費の状況を見てみよう(図表4参照)。
ここでは、より現実的な教育費比率を見るため、世帯主の年齢が65歳未満の集計数値を使用している。ただし、65歳未満に限った結果、都道府県別ではサンプル数がさらに少なくなってしまっているという制約が生じている点には留意が必要である。
例えば、サンプル数の関係で、高知では、たまたま大学授業料等の支出が異常に多くなっていたので補正した。サンプル数が相対的に少ない地方圏の諸県では結果データのばらつきが大きいということを前提にこのデータを見る必要があろう。
仕送り金を含めた教育費、1位は東京ではなく兵庫、2位群馬、5位長崎
こうした点を踏まえた上で、教育費比率のランキング(図表4)や分布マップ(図表5)を見ると、教育費比率の高い教育熱心な地域は大都市圏に集中するかたちとなっていることが明確である。
ランキング10位までは広島を除くとすべて3大都市圏の都府県で占められており、また、3大都市圏の都府県はすべて10位までにランクインしている。授業料が高い私立の進学校や私立大学が多いことが大きく影響していると考えられる。
また、トップの東京に次ぐ2~4位は関西圏の府県となっており、東京以外の東京圏の県は5位以下となっている。そうした意味では、関西のほうが関東より教育熱心だともいえる。
教育費が10位以下の地域はどこかをマップで見てみると、佐賀、福岡、茨城、滋賀、香川といった3大都市圏に隣接する諸県、及び福岡都市圏の福岡、佐賀となっており、やはり大都市圏の周辺部で教育熱心であることがうかがわれる。
なお、国内遊学仕送り金の比率を見てみると、大都市圏では自宅通学も多いのであまり大きな割合を占めていないのに対して地方圏の諸県ではかなり高い割合となり、場合によっては教育費をも上回る比率になっている点が目立っている。
このため、教育費のランキング上位はすべて3大都市圏の都道府県だったのに対して、国内遊学仕送り金を含めた教育費のランキング(図表5)では、トップが東京ではなく兵庫、また、2位は群馬、5位は長崎、8~10位は鹿児島、徳島、大分と10位以内に地方圏の諸県、特に九州・四国の諸県がランクインするという結果になっている。
地方圏の地域にとって、子どもを遊学させる経費がいかに重くのしかかっているかがうかがわれる。大学まで子どもを通わせることによる教育費の負担の大きさは大都市も地方も小さくはないのである。