たとえば、よくみかけるのが、あいつはダメな奴だから、何度も言わなければならないと決めつけているケース。

「あれやっといて」と言って、しばらくやったら「なんでやってないの? 忘れずにやっといてよ」ともう一度繰り返し、それでも結局やってなくて「なんでやってないの? 忘れないでって言ったよね」とちょっとイライラしながら言う。そんな経験ないでしょうか。

「印象」に縛られて、同じ指導を繰り返す。これで多くの上司は失敗しています。

リモートで、その人に接する機会が減った今、この「印象」がなかなか変わらずに、指導がよりうまくいってないというケースが多いように感じます。

その結果、

・仕事の生産性が上がらない
・離職する人が後を絶たない
・部下との人間関係がうまくいかない
・仕事のトラブルがよく起きる

など、いろいろな問題が発生しています。

いい上司の条件「部下の印象にとらわれない」

私は、約30年間、部下育成の指導にたずさわってきましたが、リモートワークが広がっていく中で、これまで以上に会社の、そして上司の育成能力が、会社の業績に与える影響がより大きくなってきたと感じています。

育成がうまくいっている会社は、リモートでも部下が効率的に仕事をし、それまでと変わらない、むしろそれまで以上に効率的に仕事ができていますが、育成がうまくいっていなかった会社は、リモートでより一層育成が難しくなり、苦戦を強いられているように見受けられます。『1万人の部下をぐんぐん成長させたすごいノート術 部下ノート』を今回、出版したのも、そのような上司の悩みを少しでもやわらげることができないかと思ったからです。

では、指導がうまくいくには、どうすればいいか。それは、「印象」にとらわれず、部下のことをよく知り、適切な指導をすることです。

歩きながら会話する2人のビジネスウーマン
写真=iStock.com/imacoconut
※写真はイメージです

そこで、私が自信をもっておすすめする方法があります。それが「部下ノート」です。

指導力をぐんっとあげる「部下ノート」の書き方

本書では、以下のように例を挙げて、詳しく掲載しているのですが、ここでは簡単に説明していきます。

部下ノートの記入例
出典=望月禎彦、髙橋 恭介『1万人の部下をぐんぐん成長させたすごいノート術』(アスコム)

まず、上の記入欄に、何度も同じことを聞いてくるとか、最近売り上げが減っているとか、部下の気になった行動を書きます。

次に下の段に、それに対して、部下にどう指導したかを書く。そして、後に、自分の指導によって行動が変わったかを○、△、×の三段階で評価し、3週間を目安に、成果につながったかを同じように○、△、×の三段階で評価します。

○は成果が出た、△がこれからうまくいくかもしれない、×がダメだったという感じです。

行動が×であれば、指導自体を見直して、成果が×の場合は、成果を出すためには、どうすればよいのかを改めて考えます。

上司というのは、意外に自分が部下に対して、どんなアプローチをしたのか意識して覚えていないものです。

「部下ノート」をつけると、場当たり的に行っていた指導が記録され「見える化」されることで、精度の高い次の一手が打てるようになります。「部下ノート」を使って、定期的に、部下の行動と自分の指導方法をチェックし、「どういうアプローチをしたらいいのか」を見直すことができるのです。