資格取得の直後に運休、キャリア積めず

もうひとりのグランドスタッフ、福島実香は入社4年目。熊本県出身の福島は、小学生の時にANAが舞台の『グッド ラック』(木村拓哉主演・TBS系)というドラマを見て以来、航空業界に憧れ続けてきた。大学も航空業界に就職するために外国語大学に進学した。

飛行機が飛び立つときには毎回大きな達成感があると話す福島さん。(写真提供=ANA)
飛行機が飛び立つときには毎回大きな達成感があると話す福島さん。(写真提供=ANA)

「私は現在、3つのキャリア(外航)を担当しています。昨年、1つのキャリアでDCの資格を取得しましたが、直後に運休が始まってしまったのでDCとしてのキャリアを積めていません。ここで仕事を離れたら中途半端になってしまうので、なんとかこの職場でがんばっていこうと思っています。

グランドスタッフの仕事は、最後のお客様が搭乗口を通って、ドアを閉めて、飛行機が飛び立ったとき、今日も安全に定刻通りにお見送りできたなって、すごい達成感がありますね」

いつでも戻れるように、訓練を続ける

空港での仕事は、小さなミスが大きなトラブルにつながりかねない責任の重い仕事であると同時に、発着1回ごとに完結するという意味では達成感を得やすい仕事なのかもしれない。

思うような仕事ができなかった1年を、ふたりはどう過ごしたのだろうか。岩佐が言う。

いつ飛行機が戻っても対応できるように、トレーニングを続けていると話す岩佐さん。(写真提供=ANA)
いつ飛行機が戻っても対応できるように、トレーニングを続けていると話す岩佐さん。(写真提供=ANA)

「いつお客様と飛行機が戻ってきても対応できるように、知識と端末操作のレベルを維持するための訓練を継続してきました」

2つの外航でDCを務める岩佐は、訓練のメニューを考える立場にある。

「実際にチェックインカウンターなどを使って訓練するわけですが、復便のめどが立たない中で、緊張感を維持するのはとても大変なことです」

岩佐は通常業務の訓練のほかに、接客時の細かな所作や敬語の使い方の見直しなどをつけ加えているという。

「せっかくの機会なので、日頃できないことをやってみようと思っているのです」

一方の福島は、英語力の維持に余念がない。

「お客様の大半が外国の方なので、勤務中は常に英語を話している状況でした。ところが、便がなくなって一切英語を聞かない、話さない状況になってしまったので、時間があるときはリスニングをやり、TOEICの勉強も継続しています。新千歳はオリンピックを見据えて2019年の8月に国際線のロビーを拡張したばかりだったので、全便欠航の案内板を見ると心が痛みます」