生粋の「エンジン屋」である三部次期社長
「ホンダが『目指すべき姿』に早期に持っていく時間が重要と考える」。社長交代発表の会見で三部氏はこう発言した。
世界の自動車産業は門外漢のはずだった巨大ITプラットフォーマーが自動運転や電気自動車(EV)など、「CASE」(つながる、自動、安全、環境)に代表される先端技術で自動車市場への参入を進め、自動車大手は「100年に一度の大変革期」で業界の既得権ともいえる技術、生産力を大きく脅かされる時代を迎えつつある。
三部氏はこの点についてもホンダの復活、大変革期への備えとして「アライアンス(提携)を使ってやり遂げたいことを加速する」と、"自前主義"からの脱却も辞さない覚悟を表明した。
ホンダに脈打つDNAは「孤高の自前主義」で、戦後、創業者の本田宗一郎がホンダを世界的な二輪車、四輪車メーカーに導いてきた原動力だった。三部氏はマツダのお膝元である広島大学で内燃機関の研究に没頭し、F1に挑み続けるホンダを就職先に選んだ生粋の「エンジン屋」だ。
タブー視されてきた「自前主義からの脱却」はなるか
今、世界の自動車産業が真正面から向き合わなければならない「脱炭素」の流れが加速する中で、ホンダは電気自動車(EV)で出遅れた。そんなホンダにあって米自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)との提携を進めたのはエンジン屋の三部氏だった。
社長交代発表の会見での三部の発言は、ホンダにとってタブー視されてきた自前主義からの脱却を辞さない覚悟を表明した格好だ。
ホンダはトップ交代と同時に、指名委員会等設置会社への移行も発表し、トップ人事に社外の意見を汲み入れて透明性と客観性を高める企業統治(コーポレートガバナンス)改革を進める。
孤高の自前主義からも脱皮し、「ホンダらしさ」をよみがえらせ、そして復活への道筋にいかに導けるか――。ホンダの新社長に就く三部氏の手腕に「未来のホンダ」がかかってくる。