英国とトルコでの四輪車生産は「お荷物」だった

英国事業撤退と同時に、ホンダは小型乗用車「シビック」のセダンを生産するトルコでの四輪車生産も2021年中に終了する計画を表明した。英国事業撤退と合わせると、ホンダがEUでの四輪車事業でいかに苦戦していたかが裏付けられる。

トルコはEUの非加盟国ながら、世界の製造業大手の多くはEU市場向けの重要拠点に位置付ける。しかし、ホンダの場合、英国工場での生産台数の6割超を北米と日本に出荷しており、トルコは欧州拠点としての意味が薄れていた。ホンダがじり貧の欧州市場を見据え、英国、トルコで四輪車生産を維持していくことはもはや“お荷物”でしかなく、世界生産体制の最適化を進めるうえで両国での事業撤退を決断した。

ホンダの技術力の高さを象徴してきた世界最高峰の自動車レース、フォーミュラ・ワン世界選手権「F1」からの完全撤退を2020年10月に発表したのも、これと無縁ではない。

2014年6月29日、ザントフォールト・サーキットにて
写真=iStock.com/Sjoerd van der Wal
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F1から完全撤退し、「再参戦はない」と明言

ホンダの八郷社長は昨年10月2日のオンライン記者会見で「2021年シーズン限りでF1活動を終了する」と語っていた。1964年のF1初参戦以来、参戦と撤退を繰り返してきたものの、八郷社長は「再参戦はない」と言い切った。

撤退の理由は「カーボンフリー技術の投入をさらに加速するため」とした。

ホンダは温室効果ガスの排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルを2050年に実現する目標を掲げる。その前提に、2030年に四輪車販売の3分の2を電動化することを目指している。そのためには経営資源の多くを電動化や環境対策に振り向けなければならない。さらにF1は欧州で人気が高いものの、宣伝効果が限定的だったという指摘もある。

工場閉鎖という点ではホンダは日本国内にも切り込んだ。老朽化した狭山工場(埼玉県狭山市)での四輪車生産を2021年度までに寄居工場(同寄居町)に移管する。狭山工場は四輪車生産を終了した後は関連する一部の部品を生産するものの、それも寄居工場に移し、狭山工場は2023年度に閉鎖する。