米中関係で考えるべき3つのポイント

今後の米中関係は3つの側面から考える必要がある。

1つが「軍事」である。今やアメリカにとって最大の軍事的脅威は中国であり、実際に軍事衝突に発展する可能性が高いのは台湾海峡だ。中国は台湾や米艦隊への攻撃用にハイテクの極超音速滑空ミサイルを実戦配備していて、これは迎撃不能と言われている。中国からは内政干渉と非難され、しかも世界に冠たる米艦隊が沈められかねない台湾有事にどこまで本気で介入するのか。台湾問題はバイデン政権にとって大きな試練になるし、政権の覚悟が問われる。

米中関係の2つ目のポイントは「貿易」である。トランプ前大統領は「アメリカの雇用を取り戻す」と言って中国製品に高い関税をかけたが、雇用は全然戻らなかった。それどころか関税がかかって輸入品が高くなれば、割を食うのはアメリカの消費者である。政府は関税収入を無駄づかいの原資とした。

世界の最適地で生産された安くて良いものが消費者に届くサプライチェーンの現実を、グローバル経済、ボーダレス経済下では受け入れざるをえない。アメリカは中国からの廉価な輸入品が国内の消費者を助けている、インフレ抑制の大きな力になっている、という発想に変える必要がある。

3つ目のポイントは「世界標準の覇権争い」。中国は2028年頃にGDPでアメリカを抜くと言われているが、中国が次に狙っているのが「世界標準」だ。各種の国際機関のトップに中国人を送り込んでポジションを得て、中国のスタンダードを世界標準に変えていく。日本のJIS規格やアメリカのANSI(米国国家規格協会)などに代わって中国の技術規格を世界標準にしていこうというのだ。

このような3つの領域から、中国は強国化戦略を着々と進めている。今のアメリカにはこれに敵う国家ビジョンや対抗戦略がなく、後手後手に回ってモグラ叩きのように対処しているのが実情だ。バイデン大統領は外交演説で「(中国の)経済の悪用と攻撃的で威圧的な行動、人権と知的財産、グローバル・ガバナンスへの攻撃に対抗していく」と口では語っているが、政権の性格からしてトランプ前政権のような無茶な圧力はかけにくい。

こうした中で日本との関係はどうかといえば、バイデン外交では日本の優先順位は低いだろう。その中で日本としては、トランプ前政権時にはトランプに遠慮して何もできなかった、中国との関係の強化に取り組むべきだ。

だからといって、自民党の二階幹事長に見られるような朝貢外交で中国に媚びるのではなく、トランプ政権による米中貿易戦争の被害を受けたサプライチェーンの正常化を、対等な立場で行うことにまず取り組むべきである。

(構成=小川 剛 写真=AFLO)
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