漫画家はこれまでの仕事の中で一番「平穏」
【岩波】漫画家は天職だと思いますか?
【沖田】そうですね。アシスタントの給料の計算ができないぐらいで、今のところ問題はないです。仕事も安定してるし、締切は守ってるし。これまでの仕事で一番平穏な感じ。
【岩波】今、あえて漫画以外のことをしたいと思いますか?
【沖田】私の弟が同じ特性を持っていて、今グループホームにいるんです。私にホームの運営はできないと思いますが、もっと選択肢がないかなと思っちゃいます。今、グループホームってネット環境がないと人が入らないんですよ。
弟は36歳になるんですけど、自分が年を取ってることをわかってないらしくて。「俺、おっさん嫌い」とか言う。お前ももうおっさんだよ!(笑)
やっとグループホームに入れて安心だけど、いつ出て行けと言われるかわからない。前にいた所は良かったんですけど、仲が良かった職員さんが辞めてから合わなくなって。そういう施設をもっと作りたいなと思います。
認知の歪みを直してくれるパートナーが不可欠
【岩波】ひとつ、いいでしょうか。若い方で、発達障害をお持ちで、漫画なりイラストなりの技術を持っている。そういう人たちに、沖田さんのように成功するためにはどうしたらいいか、アドバイスはありますか?
【沖田】ひとりじゃ無理。
なので、できればパートナーが欲しい。自分の認知の歪みを逐一直してくれる存在が絶対に必要です。
私は旦那がいなかったら漫画家をやれてないので。悲しいことにそういう歪みは、自分じゃ一生気づかないんです。何かおかしいなとは思うんだけど。
【岩波】それは、夫やパートナーでないと難しいですか? 例えば家族ではダメ?
【沖田】家族は入り込みすぎますからね。
生まれたときから私を知っている人は、私のベースの性格を基準にしてるんです。だからアドバイスが人格批判になってしまう。仕事にしろ結婚にしろ、私が成人になってから関係が始まった人のアドバイスのほうが、わかりやすいです。
【岩波】おっしゃる通りで、家族は冷静でいられない。
【沖田】否定ばっかりするじゃないですか。
【岩波】家族は感情的に話してしまいがちですね。「あのときこうして、こう言ったからこうなんだよね」とか、過去を反芻することがよく起きます。
【沖田】それがイヤ! 過去の過去までほじくりだして。「私だって言いたいことはたくさんあるよ。でも我慢してしゃべらないのに、なんでそっちはズケズケ言うわけ?」って思います。
【岩波】いま比較的多いのは、中高年夫婦で来る方。特に奥さんが夫を連れてくるパターンです。夫が話を聞かない、何か頼んでもやってくれないという妻からの主張です。